あ
●哀婉(あいえん)
哀れで、優しさのあるさま。
(『三国志』序)
●隘路(あいろ)
狭くて通行の困難な道。
(『三国志 出師の巻』蜀山遠し)
(『三国志 五丈原の巻』水火)
(『三国志 五丈原の巻』松に古今の色無し)
●丫鬟(あかん)
あげまきに結んだ髪型。
(『三国志 群生の巻』傾国)
●芥(あくた)
ごみ。くず。
(『三国志 図南の巻』老将の功)
●遊ばしませ(あそばしませ)
遊ぶは「する」の尊敬語。
●可惜(あたら)
残念なことに。
(『三国志 草莽の巻』火星と金星)
(『三国志 孔明の巻』徐庶とその母)
●能わず(あたわず)
せずにいられない。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●篤い(あつい)
病気が重い。
(『三国志 出師の巻』遺孤を託す)
●悪鬼羅刹(あっきらせつ)
人に害を与える化け物のこと。
(『三国志 図南の巻』酒中別人)
●豈(あに)
どうして。
(『三国志 臣道の巻』鬮)
(『三国志 孔明の巻』立春大吉)
(『三国志 赤壁の巻』亡流)
●鐙(あぶみ)
馬具の一種。馬に登るとき、および、乗っているときに爪先を乗せる部分。
(『三国志 草莽の巻』好敵手)
(『三国志 五丈原の巻』死せる孔明、生ける仲達を走らす)
●荒胆(あらぎも)
恐怖心を見せることなく、苦痛や危険に立ち向かうことのできる精神のある性質のこと。
(『三国志 臣道の巻』雷鼓)
●あらばこそ
実際はそうではないから。
●安逸(あんいつ)
何もせずにぶらぶら暮らすこと。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●安臥(あんが)
楽な姿勢で寝ること。
(『三国志 五丈原の巻』死せる孔明、生ける仲達を走らす)
●安穏(あんのん)
何事もなく穏やかなこと。
(『三国志 赤壁の巻』酔計二花)
い
●唯々諾々(いいだくだく)
事の善悪を是非に関わらず、他人の言動に逆らわらずに賛成すること。
(『三国志(七)望蜀の巻』荊州往来)
●唯々として(いいとして)
他人のことばに少しもさからわずに従うさま。
(『三国志(八)図南の巻』成都陥落)
●偉躯(いく)
大きな身体。
(『三国志 五丈原の巻』二次出師表)
●師(いくさ)
軍隊のこと。
(『三国志 臣道の巻』白門楼始末)
●遺孤(いこ)
遺児。
(『三国志 出師の巻』蜀山遠し)
●頤使(いし)
あごで人を使うこと。
(『三国志 望蜀の巻』馬騰と一族)
●遺醜(いしゅう)
よこしまな宦官の醜い子孫。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●いずくんぞ
どうして。
(『三国志(六)赤壁の巻』火中の栗)
●一瞥(いちべつ)
ちらっと見ること。
(『三国志(三)草莽の巻』北客)
●一眄(いちべん)
ひとにらみすること。
(『三国志 臣道の巻』白門楼始末)
(『三国志 出師の巻』七歩の詩)
●一類(いちるい)
同じ仲間。
(『三国志 出師の巻』七歩の詩)
●一角(いっかく)
一つの方面。
(『三国志 五丈原の巻』髪を捧ぐ)
●一杯ノ水、安ンゾ能ク薪車ノ火ヲ救ワン(いっぱいのみず、いずくんぞよくしんしゃのひをすくわん)
小さな仁(一杯の水)では、大きな不仁に克てないこと。『孟子』孔子篇の言葉。
(『三国志 出師の巻』月落つ麦城)
●詐る(いつわる)
うそを言ってだます。
(『三国志 五丈原の巻』具眼の士)
●逸をもって労を撃つ(いつをもってろうをうつ)
味方を安逸の状態におきつつ、敵の疲労をつくこと。『孫子』軍争篇に、「以佚待労」とある。
(『三国志(三)草莽の巻』奇計)
●厭う(いとう)
いやがる。
(『三国志 孔明の巻』于吉仙人)
(『三国志 出師の巻』桃園終春)
●いとど
ますます。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●古の舜が堯を受けたように、禹が舜の世を継いだように(いにしえのしゅんがぎゅうをうけたように、うがしゅんのよをついだように)
禅譲を指す。堯、舜、禹はいずれも古代伝説上の帝王。血縁ではなく有徳者に君主の地位を譲ることを禅譲と呼び、理想とされた。
(『三国志(二)群生の巻』傾国)
●囲繞(いにょう)
まわりを取り囲むこと。
(『三国志(四)臣道の巻』一書十万兵)
●衣鉢をつぐ(いはつをつぐ)
師からその道の奥義を受け継ぐこと。また前人の事業などを受け継ぐこと。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●慰撫(いぶ)
なぐさめいたわること。
(『三国志(四)臣道の巻』奇舌学人)
●いぶかる
不審がること。
(『三国志(五)孔明の巻』関羽千里行)
●尹(いん)
河南郡の長官。俸禄は中二千石で九卿(大臣)と同じ。河南郡は都である洛陽を含むため、その長官は太守ではなく特別に尹と呼ぶ。
●慇懃(いんぎん)
人に接する物腰が丁寧で礼儀正しいこと。
(『三国志(二)群生の巻』偽忠狼心)
(『三国志(三)草莽の巻』増長冠)
(『三国志(四)臣道の巻』一書十万兵)
(『三国志(四)臣道の巻』不戦不和)
●印綬(いんじゅ)
印はハンコで、綬はそれを掛けるストラップ。官人の身分を示すため、材質や色が異なる。
●殷賑(いんしん)
大変ににぎわって、盛んなさま。
(『三国志(四)臣道の巻』太医吉平)
う
●烏戈国(うかこく)
未詳。後漢末に活動した烏滸人(現在の広西チワン族自治区と関わる。
(『三国志 出師の巻』藤甲蛮)
●烏丸(うがん)
幽州北部に居住する騎馬民族。かつて曹操に平定された。
(『三国志(五)孔明の巻』遼西・遼東)
(『三国志(八)図南の巻』次男曹彰)
●嘯く(うそぶく)
豪語する。
(『三国志(八)図南の巻』陣前公用の美酒)
●梁(うつばり)
屋根の重みを支えるための横木のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』名医)
●優曇華の花(うどんげのはな)
仏教で、三千年に一度開くという花。極めて稀にあることの喩え。
(『三国志(二)群生の巻』虎牢関)
●倦む(うむ)
同じ状態が長く続いて、いやになること。飽きる。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
(『三国志 孔明の巻』立春大吉)
(『三国志 五丈原の巻』西部第二戦線)
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●倦んだ(うんだ)
飽きた。
●雲表(うんぴょう)
雲の上。
(『三国志(五)孔明の巻』兄弟再会)
え
●英邁篤実(えいまいとくじつ)
優れた才能と知恵があり、細かいことにこだわらない大らかな心があること。
(『三国志(五)孔明の巻』孫権立つ)
●易経(えききょう)
儒教経典の一つで、五経に数えられる。『周易』ともいい、占術を記録する。ただし「燈花」の吉兆は『易経』には見られない。
(『三国志(四)臣道の巻』燈花占)
●依怙(えこ)
不公平。
(『三国志(八)図南の巻』烽火台)
●越騎校尉(えっきこうい)
皇帝直属の宿営兵である「五営」を率いる校尉の一つ。俸禄は比二千石。
●悦服(えっぷく)
心から喜んで従うこと。
(『三国志(六)赤壁の巻』出廬)
●得物(えもの)
自分の得意とする武器のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』不戦不和)
●蜿蜒(えんえん)
うねり曲がって長く続くさま。
(『三国志 図南の巻』次男曹彰)
(『三国志 五丈原の巻』二度祁山に出づ)
●袁隗(えんかい)
太傅(たいふ)。袁紹の伯父。
●掾公悌(えんこうてい)
傅巽(ふそん)の字。
(『三国志(六)赤壁の巻』許都と荊州)
●燕雀なんぞ鴻鵠の志を知らんや(えんじゃくなんぞこうこくのこころざしをしらんや)
燕雀(ことり。小人のたとえ)には鴻鵠(おおとり。英雄のたとえ)の志はわからない、の意。『史記』陳渉世家に載せる陳勝の言葉。陳勝・呉広の乱は、楚漢戦争のはじまりとなる。
(『三国志(二)群生の巻』偽忠狼心)
●猿臂(えんび)
さるのように長いひじ。
(『三国志(八)図南の巻』馬超と張飛)
●轅門(えんもん)
陣営の門のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』平和主義者)
お
●王(おう)
皇帝の諸子は、郡に当たる地域を「〇〇国として名目的に領有し、「〇〇王」と称する諸侯王となることが多い。
●枉屈(おうくつ)
身をかがめ、へりくだること。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●媼(おうな)
老女。
(『三国志(五)孔明の巻』徐庶とその母)
●王法ニ親ナシ(おうほうにしんなし)
国家の法(王法)は、親疎の区別なく行われること。法の厳しさを表現する。
(『三国志(四)臣道の巻』煩悩攻防戦)
●王莽(おうもう)
前漢末に外戚・儒者として台頭し、やがて前漢を滅ぼして新を建国した。しかし十年余りで赤眉の乱が起こり敗死する。
(『三国志 臣道の巻』美童)
●諡(おくりな)
死後にその人の徳や功績をたたえて贈られる称号。
(『三国志 五丈原の巻』松に古今の色無し)
●烏滸(おこ)
おろかなこと。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●惜しむらく(おしむらく)
惜しいことよ。残念なことよ。
(『三国志 群生の巻』偽忠狼心)
●諂ねる(おもねる)
きげんをとってその人の気に入るようにする。
(『三国志 図南の巻』日輪)
●恩爵(おんしゃく)
特別に与える爵位、身分。
(『三国志 図南の巻』漢中併呑)
か
●魁偉(かいい)
顔や体が人並はずれていかついさま。
●恢弘(かいこう)
事業や制度、教えなどを世に広めること。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●快哉(かいさい)
痛快なこと。
(『三国志(六)赤壁の巻』風を呼ぶ杖)
●鎧袖一触(がいしゅういっしょく)
よろいのそででちょっと触れたぐらいの簡単さで敵を負かすこと。
(『三国志 五丈原の巻』水火)
●蓋世(がいせい)
世をおおいつくすほどの手腕や気力があること。
(『三国志 五丈原の巻』高楼弾琴)
●疥癬(かいせん)
皮膚病を引き起こす疥癬虫「ダニの一種」のような、微弱な外患のこと。
(『三国志 臣道の巻』雷怯子)
●潰走(かいそう)
戦いに負けた隊が四分五裂になって逃げること。
(『三国志 望蜀の巻』不倶戴天)
(『三国志 五丈原の巻』水火)
●回天(かいてん)
衰えた勢いを盛り返すこと。
(『三国志 図南の巻』正月十五夜)
●晦冥(かいめい)
くらやみ。くらくなること。
(『三国志 赤壁の巻』覆面の船団)
(『三国志 出師の巻』孔明を呼ぶ)
●潰乱(かいらん)
敵に敗れ秩序を失って、まとまりがつかないこと。
(『三国志 出師の巻』歩く木獣)
●峨々(がが)
山や岩石などが険しくそびえ立っているさま。
(『三国志(九)出師の巻』蜀山遠し)
●雅客(がかく)
風雅を理解し愛好する人のこと。
(『三国志 臣道の巻』一書十万兵)
●夏輝(かき)
十常侍のひとり。儀郎。
●隔意(かくい)
その人に対し打ち解けない気持ちのこと。
(『三国志 臣道の巻』不戦不和)
●楽女(がくじょ)
高官の邸に飼われて、賓客のあるごとに、宴にはべって歌舞吹弾(かぶすいだん)する賤女(せんじょ)をいう。
(『三国志 群生の巻』牡丹亭)
●鶴氅(かくしょう)
白地に黒く縁(ふち)をとり、被風(ひふ)のように仕立てた、鶴の羽毛で織った衣を思わせるような服のこと。
(『三国志 孔明の巻』立春大吉)
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●嚇怒(かくど)
はげしく怒ること。
(『三国志 群生の巻』秋雨の頃)
●岳麓(がくろく)
山のふもと。
●何后(かこう)
洛陽にも稀な美人であっため、貴人の娘となって宮廷に入り、帝の胤(たね)をやどして弁皇子(べんおうじ)を生んだ。皇后となってからは何后(かこう)といわれている。
兄は何進(かしん)。
●喞つ(かこつ)
不平を言ってなげく。
(『三国志 五丈原の巻』高楼弾琴)
●仮借(かしゃく)
大目に見てやり、まあまあと許すこと。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
(『三国志 五丈原の巻』馬謖を斬る)
●何承天(かしょうてん)
南朝劉宋の人。天文・律暦に深く通じ、元嘉暦を編纂。また、円周率を計算した。
(『三国志 草莽の巻』日時計)
●何進(かしん)
もと牛や豚を屠殺(とさつ)して業としていたが、妹が、宮廷に入り、皇子を生んだことにより、兄の何進も、一躍要職につき、権を握る身となった。
●駕す(がす)
牛、馬などに車を引かせる。
(『三国志 五丈原の巻』松に古今の色無し)
●稀世(きせい)
世にまれなこと。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●佳節(かせつ)
めでたい日のこと。
(『三国志 臣道の巻』太医吉平)
(『三国志 図南の巻』正月十五夜)
●河内郡(かだいぐん)
司隷東端部の郡。黄河を挟んで南側に洛陽を臨む。
(『三国志(二)群生の巻』生死一川)
●かたわら
そば。
(『三国志 五丈原の巻』高楼弾琴)
●果断(かだん)
ためらわずに思い切ってすること。
(『三国志(四)臣道の巻』黄河を渡る)
●戛然(かつぜん)
堅い物が触れ合って音を表す語。
(『三国志(五)孔明の巻』のら息子)
●刮目(かつもく)
目をこすってよく見ること。
(『三国志 五丈原の巻』鶏家全慶)
●和帝(かてい)
後漢の第四代皇帝。在位八八~一〇五年。
(『三国志(八)図南の巻』絶妙好辞)
●鼎(かなえ)
三本足の鉄のかま。
(『三国志 出師の巻』蜀呉修交)
●寡兵(かへい)
敵よりも小人数の部隊。
(『三国志(六)赤壁の巻』殺地の客)
●甕(かめ)
土器、陶器の一種で、貯蔵、運搬、発酵、化学反応に用いられる容器のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』不戦不和)
●搦手(からめて)
城の裏門。または、城の裏門や敵陣の後ろ側を攻める軍勢のこと。
(『三国志 草莽の巻』黒風白雨)
(『三国志 草莽の巻』奇計)
(『三国志 出師の巻』孔明を呼ぶ)
(『三国志 五丈原の巻』美丈夫姜維)
●仮普請(かりぶしん)
一時しのぎの簡単な建築のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』改元)
●駕を枉げる(がをまげる)
貴人が乗り物の方向をわざわざ変えて来訪すること。『三国志』諸葛亮伝に「将軍(劉備)宜しく駕を枉げて之を顧みるべし」とある。
●姦(かん)
自分の都合をはかって不正をする。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●宦官(かんがん)
宮中に仕える去勢された男子のこと。本来、皇帝や皇后の身の回りの世話係であったが、権力の中枢に居るため、後漢・唐・明で強大な権力を振るった。
(『三国志 桃園の巻』十常侍)
●奸計(かんけい)
わるだくみ。
(『三国志 赤壁の巻』亡流)
●間隙(かんげき)
すきま。
(『三国志 篇外余録』魏から――晋まで)
●諫言(かんげん)
いさめること。
(『三国志(七)望蜀の巻』鴻門の会に非ず)
●莞爾(かんじ)
喜んでにっこり笑う様子。
(『三国志 望蜀の巻』西蜀四十一州図)
(『三国志 出師の巻』荊州変貌)
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
●観取(かんしゅ)
見てそれと知ること。
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
●韓信(かんしん)
前漢建国の功臣。「背水の陣」「国士無双」の故事を生んだ名将で、斉王に封じられたが、漢の統一後、謀反の疑いで誅殺された。
(『三国志 群生の巻』天颷)
●漢晋春秋(かんしんしゅんじゅう)
習鑿歯(しゅう さくし)の撰。蜀漢の正統を主張する史書。
(『三国志 五丈原の巻』木牛流馬)
●鼾睡(かんすい)
いびきをかいて眠ること。
(『三国志 孔明の巻』兄弟再会)
●陥穽(かんせい)
人をおとしいれるはかりごと。
(『三国志 図南の巻』臨江亭会談)
(『三国志 五丈原の巻』具眼の士)
●諫奏(かんそう)
君主に忠言を申し上げること。
(『三国志 出師の巻』桃園終春)
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●関内侯(かんだいこう)
爵位。列侯に次ぐ地位を持つ。
(『三国志 図南の巻』馬超と張飛)
●肝胆(かんたん)
肝臓と胆嚢(たんのう)。転じて、心の中のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』太医吉平)
●韓忠(かんちゅう)
孫仲(そんちゅう)・趙弘(ちょうこう)とともに宛城にたて籠っていた黄巾賊の残党。
宛城で、朱雋に鉄弓で射とめられた。
●旱天(かんてん)
ひでりの空。
(『三国志 出師の巻』白帝城)
●肝脳(かんのう)
肝臓と脳髄。 転じて、肉体および精神のこと。
(『三国志(五)孔明の巻』兄弟再会)
●漢の高祖三尺の剣をひっさげて白蛇を斬り(かんのこうそさんじゃくのつるぎをひっさげてはくじゃをきり)
前漢を建国した劉邦が、郷里にいたとき白蛇を斬ったという『史記』高祖本紀に見られる故事。赤帝の裔である劉邦が白帝の子の化身である白蛇を斬ったことから、漢の建国の予兆であるとされた。
●悍馬(かんば)
あらうまのこと。
(『三国志(三)草莽の巻』改元)
●観破(かんぱ)
真相を見やぶること。
(『三国志 出師の巻』鹿と魏太子)
●管鮑の交(かんぽうのまじわり)
二人の親密で理解しあった交際のことをいう。管仲(かんちゅう)と鮑叔(ほうしゅく)はともに春秋時代の斉に仕え、桓公を覇者とした。
(『三国志(四)臣道の巻』避客牌)
●翰墨(かんぼく)
筆と墨のこと。
●奸雄(かんゆう)
悪知恵にたけた英雄のこと。
(『三国志 臣道の巻』太医吉平)
(『三国志 出師の巻』武祖)
●閑話休題(かんわきゅうだい)
余談を打ち切って、本筋にもどる意を表す語。それはさておき。
(『三国志(九)出師の巻』蜀山遠し)
き
●来合せる(きあわせる)
ちょうどやって来て、たまたま出会う。
(『三国志 五丈原の巻』髪を捧ぐ)
●旗下・麾下(きか)
軍団の指揮者に属する部下のこと。旗本。
(『三国志(二)群生の巻』死活往来)
(『三国志(三)草莽の巻』日時計)
(『三国志(三)草莽の巻』梅酸・夏の陣)
(『三国志(四)臣道の巻』偽帝の末路)
●掎角(きかく)
鹿を捕らえるのに、後ろからは足をひき(掎)、前からは角をとる(角)ように、前後が呼応して敵にあたること。
(『三国志 臣道の巻』煩悩攻防戦)
●亀鑑(きかん)
見習うべき手本。
(『三国志 図南の巻』馬超と張飛)
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●義挙(ぎきょ)
正義のために行動を起こすこと。
●奇矯(ききょう)
言動が普通と違っていること。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●規矩(きく)
手本。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●奇捷(きしょう)
不意を打って得る勝ち。
(『三国志 図南の巻』遼来々)
●奇瑞(きずい)
めでたいことの前兆として起こる不思議な現象。
(『三国志(二)群生の巻』珠)
●鞠躬如(きっきゅうじょ)
身をかがめて、おそれ慎むさま。
(『三国志(四)臣道の巻』鬮)
●譎詐(きっさ)
いつわりあざむくこと。
(『三国志 出師の巻』呉の外交)
●吉左右(きっそう)
良い報せ。良いなりゆき。
●笈(きゅう)
遊学のため郷里を出ること。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●久濶を叙する(きゅうかつをじょする)
無沙汰をわびる。
●旧誼(きゅうぎ)
昔のよしみ。
(『三国志(六)赤壁の巻』蜂と世子)
●九五(きゅうご)
天子の位。
(『三国志 出師の巻』桃園終春)
●九錫(きゅうしゃく)
天子の用いる九種の威信財。皇帝の権威と同格であることを示す。
(『三国志(八)図南の巻』日輪)
●鳩首(きゅうしゅ)
数人あつまって相談すること。
(『三国志(四)臣道の巻』報恩一隻手)
●九州(きゅうしゅう)
天下全域のこと。
(『三国志(七)望蜀の巻』針鼠)
●九泉(きゅうせん)
九重の地の底、あるいは墓地、冥界のこと。死者の世界のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』火か人か)
(『三国志(五)孔明の巻』孫権立つ)
●九族(きゅうぞく)
最も広い範囲の親族のこと。自分の同族から母や妻の親族までを含む。
(『三国志(二)群生の巻』洛陽落日賦)
(『三国志(四)臣道の巻』油情燈心)
●九流三教(きゅうりゅうさんきょう)
九流は「儒・道・陰陽・法・名・墨・縦横・雑・農」という学問の流派、三流は「儒・仏・道」という宗教を指す。転じて、あらゆる学問・教えのこと。
(『三国志(四)臣道の巻』奇舌学人)
●炬(きょ)
たいまつ。
(『三国志(八)図南の巻』趙子龍)
●協王子(きょうおうじ)
霊帝の子。生みの親は王美人。育ての親は、霊帝の母にあたる董(とう)太后。
●跫音(きょうおん)
あしおとのこと。
(『三国志(四)臣道の巻』霧風)
●驍騎校尉(ぎょうきこうい)
皇帝直属の宿営兵である「五営」を率いる校尉の一つ。俸禄は比二千石。
●龔景(きょうけい)
青州の太守。
●恭謙(きょうけん)
つつしみ深く、へりくだること。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●矜高(きょうこう)
誇りが高い。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●僥倖(ぎょうこう)
思いがけない幸運。
(『三国志 赤壁の巻』出廬)
(『三国志 図南の巻』休戦)
(『三国志 出師の巻』蜀呉修交)
●驚殺(きょうさつ)
非常に驚くこと。
(『三国志 出師の巻』歩く木獣)
●拱手(きょうしゅ)
腕組みすること。転じて、何もせずにいること。
(『三国志 図南の巻』漢中王に昇る)
(『三国志 出師の巻』私情を斬る)
●尭舜(ぎょうしゅん)
中国古代の伝説上の帝王、尭と舜。尭・舜は、君主の地位を優秀な部下に禅譲した五帝に数えられる。徳をもって理想的な仁政を行ったことで、後世の帝王の模範とされた。
(『三国志(四)臣道の巻』奇舌学人)
(『三国志(五)孔明の巻』徐庶とその母)
●狂躁(きょうそう)
理性を失った騒ぎのこと。
(『三国志(五)孔明の巻』立春大吉)
●怯懦(きょうだ)
おくびょうで気の弱いこと。
(『三国志 出師の巻』白帝城)
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
●峡中(きょうちゅう)
迫った山と山の間。
(『三国志 出師の巻』桃園終春)
●匈奴(きょうど)
北方の異民族。漢の高祖に対抗した冒頓単于以来。強大な勢力を有していた。
(『三国志 出師の巻』改元)
●驕慢(きょうまん)
おごりたかぶること。
(『三国志(四)臣道の巻』丞相旗)
●驍勇無比(ぎょうゆうむひ)
強く勇ましく、他に比べるものがないこと。
(『三国志 図南の巻』生きて出る柩)
●漁翁(ぎょおう)
老人の漁師。
(『三国志 出師の巻』蜀また倣う)
●曲(きょく)
正しくない。
(『三国志 五丈原の巻』木牛流馬)
●曲阿(きょくあ)
揚州呉郡に属する県。
(『三国志 群生の巻』石)
●玉璽(ぎょくじ)
帝の印。
●玉歩(ぎょくほ)
天子や高貴な人を敬って、その人が歩くことをいう語。
(『三国志 群生の巻』大権転々)
●曲彔(きょくろく)
僧侶の用いる椅子。背もたれが丸く曲がっている。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●御史(ぎょし)
法令や礼式に違反した者を弾劾する監察官。侍御史ともいう。少府に属し、俸禄は六百石。
●馭者(ぎょしゃ)
馬車を走らせる人。
●漁陽(ぎょよう)
幽州西中央部の郡。
●御林軍(ぎょりんぐん)
皇帝の近衛軍。
●魚鱗の正攻陣(ぎょりんのせいこうじん)
陣立の一つで、魚のうろこの如く、中央を突出させる形の陣。
(『三国志(四)臣道の巻』報恩一隻手)
●議郎(ぎろう)
参議という意味の役であり、どんな枢密の政事にもあずかった。
●斤(きん)
漢代では、226.67グラムといわれている。八十斤だとおよそ18キロになる。
●金紫(きんし)
金印紫綬のこと。金製の印に紫色の組紐で、用いる者の官位・爵位が最高であることを示す。
(『三国志(二)群生の巻』牡丹亭)
●金枝玉葉(きんしぎょくよう)
天子の一族や子孫を貴んでいうたとえ。
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
(『三国志 五丈原の巻』髪を捧ぐ)
●金日磾(きんじつてい)
前漢武帝の側近。匈奴の出身であるが、武帝に寵愛された。
(『三国志(八)図南の巻』正月十五夜)
●禽獣(きんじゅう)
鳥獣。恩義を知らず、道理をわきまえない人のたとえ。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●欣然(きんぜん)
よろこんで。
(『三国志(八)図南の巻』老将の功))
●金瘡(きんそう)
刃物による切り傷のこと。
(『三国志(五)孔明の巻』孫権立つ)
(『三国志(八)図南の巻』鶏肋)
●錦袍(きんぽう)
錦で作った上衣のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』破衣錦心)
●禁裏(きんり)
宮中のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』緑林の宮)
(『三国志(三)草莽の巻』北客)
く
●具眼(ぐがん)
ものの本質を見ぬく力があること。
(『三国志 五丈原の巻』具眼の士)
●駆虎呑狼の計(くこどんろうのけい)
二虎競食の計(にこきょうしょくのけい)が失敗し、つぎに荀彧が曹操に進言した、劉備と呂布に対処するための策。
「袁術(えんじゅつ)には、劉備、近ごろ天子に奏請して、南陽を攻め取らんと願い出ていると告げます。劉備の方へは、袁術、朝廷に対して、違勅の科(とが)あり、早々、兵を向けて南陽を討つべしと、詔を以て、命じます。劉備は、天子の命とあっては、違背(いはい)することはできません。豹(ひょう)へ向って、虎をけしかけ、虎の穴を留守とさせます。留守の餌をねらう狼が呂布となります」
(『三国志 草莽の巻』禁酒砕杯の約)
●愚叟(ぐそう)
愚かな老人。
(『三国志(五)孔明の巻』琴を弾く高士)
●縊る(くびる)
首を絞めて命を奪う。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●厨(くりや)
料理をするところ。台所。
(『三国志(三)草莽の巻』黒風白雨)
(『三国志(四)臣道の巻』偽帝の末路)
●愚弄(ぐろう)
こばかにして、からかうこと。
(『三国志 出師の巻』白帝城)
●桑の樹(くわのき)
何百年を経たものか、村の古老でも知る者はない。劉備の家と訊けば、あの桑の樹の家さと指さすほど、村の何処からでも見えた。
楼桑村という地名も、この桑の木が茂る時は、まるで緑の楼台のように見えるから、この樹から起った村の名かもしれない、といわれている。
●君ニ事エテソノ本ヲ忘レズ(クンニツカエテソノモトヲワスレズ)
『三国志』関羽伝の注を出典とする、曹操が関羽の忠義を称えた言葉。
(『三国志(四)臣道の巻』破衣錦心)
●軍律(ぐんりつ)
劉備軍の軍律
一 卒(そつ)たる者は、将たる者に、絶大の服従と礼節を守る。
一 目前の利に惑わず、大志を遠大に備う。
一 一身を浅く思い、一世を深く思う。
一 掠奪断首(りゃくだつだんしゅ)。
一 虐民極刑(ぎゃくみんきょっけい)。
一 軍紀を紊(みだ)る行為一切死罪。”
け
●卿(けい)
君主が親しみを込めて臣下に呼びかける語。
(『三国志 五丈原の巻』食)
●軽舸(けいか)
軽快に走る小舟のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』黄河を渡る)
●烱眼(けいがん)
物事をはっきりと見抜く力。鋭い眼力。
(『三国志 草莽の巻』梅酸・夏の陣)
●敬仰(けいぎょう)
うやまいあおぐこと。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●荊棘(けいきょく)
乱れた状態。戦乱のこと。
(『三国志 臣道の巻』雷鼓)
●荊棘の道(けいきょくのみち)
イバラの道。困難な道。
(『三国志 群生の巻』偽忠狼心)
●軽忽(けいこつ)
そそっかしいこと。軽はずみなこと。
(『三国志(四)臣道の巻』鬮)
(『三国志(八)図南の巻』休戦)
(『三国志(八)図南の巻』陣前公用の美酒)
(『三国志(八)図南の巻』七軍魚鼈となる)
●荊州(けいしゅう)
長江<揚子江>沿岸。
(『三国志(二)群生の巻』溯江)
●熒星(けいせい)
火星のこと。
(『三国志(二)群生の巻』石)
(『三国志(三)草莽の巻』火星と金星)
●経世(けいせい)
世の中を治めること。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●鶏村(けいそん)
楼桑村(ろうそうそん)から四里ほど先の村。とてもいい清水は湧わいている。
●警蹕(けいひつ)
天子が出入りする際に、人の行き来を戒める、先払いの声のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』許田の猟)
●閨門(けいもん)
夫婦・家庭の仲。
(『三国志(六)赤壁の巻』鈴音)
●経綸(けいりん)
天下を統治することとその策のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』奇舌学人)
●撃攘(げきじょう)
(敵を)うちはらうこと。
(『三国志 五丈原の巻』二度祁山に出づ)
●檄文(げきぶん)
曹操が董卓を討つために諸州諸郡へ飛ばした檄文
檄
操等(ソウラ)、謹ンデ、
大義ヲモッテ天下ニ告グ
董卓、天ヲ欺(アザム)キ地ヲ晦(クラ)マシ
君ヲ弑(シイ)シ、国ヲ亡ボス
宮禁、為ニ壊乱(カイラン)
狠戻(コンレイ)不仁、罪悪重積(ジュウセキ)ス
今
天子ノ密詔ヲ捧ゲテ
義兵ヲ大集シ
群凶(グンキョウ)ヲ剿滅(ソウメツ)セントス
願ワクバ仁義ノ師(イクサ)ヲ携(タズサ)エ
来ッテ忠烈ノ盟陣(メイジン)ニ会シ
上、王室ヲ扶(タス)ケ
下、黎民(レイミン)ヲ救ワレヨ
檄文到ランノ日
ソレ速ヤカニ奉行サルベシ
(『三国志(二)群生の巻』競う南風)
●けだし
思うに。
(『三国志 図南の巻』生きて出る柩)
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●月旦(げったん)
人物の批評のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』奇舌学人)
●闕漏(けつろう)
不足な点。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●けれん
ごまかしのこと。
(『三国志(四)臣道の巻』燈花占)
●嶮(けん)
山が高くけわしい。
(『三国志 出師の巻』魚紋)
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●建安元年(けんあんがんねん)
西暦一九六年のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』改元)
●険隘(けんあい)
けわしく狭いこと。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●建安二十六年(けんあんにじゅうろくねん)
曹魏は建安二十五年を以て黄初元年に改元したが、曹魏を認めない蜀漢は建安の元号を使い続けた。
(『三国志 出師の巻』蜀また倣う)
●県尉(けんい)
片田舎の一警察署長といったような官職。
●狷介(けんかい)
自分の意志をまげず、人と和合しないこと。
(『三国志 臣道の巻』奇舌学人)
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●懸河の弁(けんがのべん)
早瀬のように勢いよくすらすらとよどみのない弁舌。
(『三国志(六)赤壁の巻』群英の会)
●玄機(げんき)
巧妙な手段。
(『三国志 五丈原の巻』洛陽に生色還る)
●建業(けんぎょう)
現在の南京付近。
(『三国志 図南の巻』日輪)
●眷顧(けんこ)
特別に目をかけること。
(『三国志 出師の巻』呉の外交)
●乾坤一擲(けんこんいってき)
運を天にまかせて、のるかそるかの勝負をすること。
(『三国志 草莽の巻』母と妻と友)
(『三国志 孔明の巻』孫権立つ)
(『三国志 図南の巻』次男曹彰)
(『三国志 五丈原の巻』司馬仲達計らる)
●峴山(けんざん)
襄陽の南にある。
(『三国志 群生の巻』溯江)
●嶮峻(けんしゅん)
高くてけわしいこと。
(『三国志 図南の巻』七軍魚鼈となる)
●謙譲の美徳(けんじょうのびとく)
人を先に立てて自分は出しゃばらないという美しい行為。
(『三国志 図南の巻』漢中王に昇る)
●厳政(げんせい)
黄巾賊。
陽城での戦いのとき、ひそかに朱雋に内通し、賊将張梁の首を斬って、軍門に降った。
●譴責(けんせき)
きびしく責めること。
(『三国志 五丈原の巻』髪を捧ぐ)
●嶮岨(けんそ)
けわしいこと。
(『三国志(六)赤壁の巻』出廬)
●眷族(けんぞく)
一族のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』空腹・満腹)
(『三国志(四)臣道の巻』霧風)
●健啖(けんたん)
好き嫌いなくよく食べること。
(『三国志(三)草莽の巻』健啖天下一)
●建徳将軍(けんとくしょうぐん)
雑号将軍のひとつ。曹操以外に用いられた例はない。
(『三国志(二)群生の巻』毒と毒)
●捲土重来(けんどちょうらい)
一度敗れたり失敗したりした者が、再び勢いを盛り返して巻き返すことのたとえ。巻き起こった土煙が再びやって来る意から。
(『三国志 草莽の巻』改元)
(『三国志 孔明の巻』十面埋伏)
(『三国志 五丈原の巻』馬謖を斬る)
●建寧(けんねい)元年
西暦一六八年。霊帝の即位年。
●権変(けんぺん)
その場に応じて適切な手段をとること。
(『三国志(九)出師の巻』蜀山遠し)
こ
●更(こう)
夜の時刻を表す単位。日没から日の出までを五等分し、それぞれ初更から五更とした。
●公(こう)
公は、諸侯王と列侯の間の爵位。後漢において臣下の爵は列侯が最上であった。
(『三国志 図南の巻』日輪)
●薨(こう)
身分の高い人が亡くなること。
(『三国志 五丈原の巻』松に古今の色無し)
●盒(ごう)
ふたつきの器。
(『三国志 図南の巻』鶏肋)
●校尉(こうい)
武官の官職名。都にあって宮中の警護にあたる部隊長から、辺境の指揮官など様々な種類がある。
霊帝期に新設された、近衛軍を司る「西園八校尉」の一つ。
●黄鉞(こうえつ)
黄金で飾った鉞(まさかり)。外交権と軍内の生殺与奪権を象徴する。周の武王が殷を誅伐する際に用いた故事による。
(『三国志 群生の巻』競う南風)
(『三国志 出師の巻』冬将軍)
●鴻恩(こうおん)
大恩のこと。
(『三国志(五)孔明の巻』関羽千里行)
●江夏(こうか)
荊州北東部の郡。
(『三国志 桃園の巻』乱兆)
(『三国志 群生の巻』溯江)
●笄(こうがい)
女性の髷(まげ)に横に挿して飾りとする道具。
(『三国志 五丈原の巻』女衣巾幗)
●慷慨(こうがい)
正義にはずれた事などを、激しくいきどおり嘆くこと。
(『三国志』序)
●溝壑(こうがく)
みぞや谷間。のたれ死ぬ場合に用いる。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●亢旱(こうかん)
干ばつ。
(『三国志 出師の巻』雁のみだれ)
●高誼(こうぎ)
目上の人から受ける好意。
●剛毅(ごうき)
意志が強固で不屈なこと。
(『三国志 臣道の巻』丞相旗)
●薨去(こうきょ)
皇族・三位(さんみ)以上の人が死亡すること。
(『三国志 出師の巻』七歩の詩)
(『三国志 出師の巻』蜀また倣う)
●後顧(こうこ)
あとに心がひかれること。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●黄口(こうこう)
年若く思慮経験の浅いこと。
(『三国志 出師の巻』一書生)
●黄口児(こうこうじ)
年が若く、経験や知識などが足りない者。 青二才。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●犢(こうし)
牛の子。
(『三国志 図南の巻』関平)
●後主伝(こうしゅでん)
『三国志』後主伝を指す。
(『三国志 五丈原の巻』木牛流馬)
●傲然(ごうぜん)
おごり高ぶって尊大に振る舞うさま。
(『三国志(三)草莽の巻』巫女)
●昂然(こうぜん)
自信に満ちて誇らしげなさま。
(『三国志(六)赤壁の巻』舌戦)
●高祖(こうそ)
漢帝国の始祖である劉邦のこと。秦を滅ぼした。
(『三国志(六)赤壁の巻』舌戦)
●拘泥(こうでい)
ほかに選びようもあるのに、一つの事にこだわること。
(『三国志 五丈原の巻』二度祁山に出づ)
●後図(こうと)
これから先のための計画のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』名医)
●叩頭(こうとう)
両膝を地面につけ、両手を地面に置いて、さらに頭を地面につけること。
(『三国志 臣道の巻』鸚鵡州)
●洪福(こうふく)
おおきなさいわい。
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
●広武君(こうぶくん)
秦末漢初の李左車のこと。その出身の趙を破った韓信が策を問うと、李左車は「敗軍の将は以て勇を言うべからず」と謙遜した。のち韓信は李左車の献策により燕王を従わせた。
(『三国志 草莽の巻』日時計)
●光武帝(こうぶてい)
後漢の初代皇帝。景帝の子孫。前漢を滅ぼした王莽に代わり天下を統一、漢室を再興した。
(『三国志 草莽の巻』神亭廟)
●鴻芙蓉(こうふよう)
名は芙蓉(ふよう)、姓は鴻(こう)。
県城を預かっておられた領主のお嬢さま。
黄巾賊が乱入し、迷っておったとき、老僧に助けられ、塔の中に保護された。その後、劉備とともに塔から脱出し、鴻家の武士だった張飛とともにした。
●口吻(こうふん)
口ぶり。言い方。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●光芒(こうぼう)
光のすじ。
(『三国志 五丈原の巻』秋風五丈原)
●皇甫嵩(こうほすう)
潁川(えいせん)で、張宝(ちょうほう)・張梁(ちょうりょう)の討伐に向かっていた。
黄巾賊の総帥張角の軍を潰滅させた功により、車騎将軍(しゃきしょうぐん)に任じ、益州(えきしゅう)の牧(ぼく)に封じられた。
●鴻門の会(こうもんのかい)
『史記』項羽本記にある故事。項羽と劉邦は鴻門において会見するが、宴会の最中に項羽側が劉邦を斬ろうと項荘に剣舞を命じる。しかし、項伯がそれを察して共に剣舞をして劉邦をかばい、そこへ劉邦の忠臣樊噲が押し入ったために、劉邦は九死に一生を得た。
(『三国志(四)臣道の巻』雷怯子)
(『三国志(七)望蜀の巻』鴻門の会に非ず)
●黄羅(こうら)
黄の薄絹。
(『三国志 出師の巻』冬将軍)
●合力(こうりき)
金銭・品物をめぐむこと。
(『三国志 図南の巻』上・中・下)
●蛟龍(こうりょう)
英雄が時を得て勢力を伸長する前のたとえ。陳寿の『三国志』周瑜伝で、周瑜は劉備の英雄ぶりを「蛟龍 雲雨を得れば終に池中の物に非ず」と評している。
●孝廉(こうれん)
後漢の官僚登用制度である郷挙里選の通常の科目名。
(『三国志 望蜀の巻』敵中作敵)
●高楼(こうろう)
たかどの。
(『三国志 五丈原の巻』高楼弾琴)
●罡を踏み斗を布く(こうをふみとをしく)
北斗七星の形にステップを踏む動作のこと。
(『三国志 五丈原の巻』秋風五丈原)
●鼓角(こかく)
つづみと、つのぶえ。陣中で合図などに用いた。
(『三国志 出師の巻』歩く木獣)
●護軍(ごぐん)
方面軍司令官である将軍に随行し、その監察を行う官。
(『三国志 赤壁の巻』臨戦第一課)
●股肱(ここう)
腹心の部下のこと。
(『三国志 桃園の巻』呂布)
(『三国志 群生の巻』虎牢関)
(『三国志 群生の巻』大権転々)
●虎侯(ここう)
許褚の渾名。
(『三国志 図南の巻』漢中併呑)
●後山叢譚(ござんそうだん)
北宋の陳師道『後山談叢』のこと。
(『三国志 五丈原の巻』木牛流馬)
●古刹(こさつ)
古い寺のこと。
(『三国志 臣道の巻』風の便り)
●故事(こじ)
「昔、殷(いん)の太甲(たいこう)無道(むどう)でありしため、伊尹(いいん)これを桐宮(とうきゅう)に放ち、漢の昌邑(しょうゆう)が王位に登って」とは、君主廃立の故事。殷の宰相である伊尹は、君主の太甲が無道であるため、これを一時廃位して更生させた。前漢の外戚である霍光は、昭帝の後継に昌邑王を即位させたが、不孝を理由に二十七日で廃位している。
●痼疾(こしつ)
ながく治らない病気。
(『三国志(六)赤壁の巻』出廬)
●扈従(こじゅう・こしょう)
貴人に付き従うこと。また、その人のこと。
(『三国志 草莽の巻』緑林の宮)
(『三国志 臣道の巻』許田の猟)
(『三国志 孔明の巻』古城窟)
(『三国志 孔明の巻』徐庶とその母)
(『三国志 出師の巻』魚紋)
●余饒(こじょう)
あり余って豊かなこと。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●小勢(こぜい)
少ない人数。
(『三国志 五丈原の巻』水火)
●克己(こっき)
自分の欲望や邪念にうちかつこと。
(『三国志 五丈原の巻』具眼の士)
●国舅(こっきゅう)
帝・天子・国王の外戚。
(『三国志 臣道の巻』秘勅を縫う)
(『三国志 図南の巻』冬葉啾々)
●此方(こなた)
こちらのほう。
(『三国志 臣道の巻』不戦不和)
●ご辺(ごへん)
貴公のこと。
(『三国志 孔明の巻』泥魚)
●髡刑(こんけい)
肉体に加える刑罰の一つで、髪を短く切られる。
(『三国志 図南の巻』短髪壮士)
●懇志(こんし)
親切に行き届いた志。
(『三国志 出師の巻』草喰わぬ馬)
●懇篤(こんとく)
親切で手厚いこと。
(『三国志 望蜀の巻』敵中作敵)
●袞龍の袖(こんりょうのそで)
袞龍とは天子の礼服。袞龍の袖に隠れると言えば、天子の権威を笠に着ること。
(『三国志 群生の巻』毒と毒)
さ
●寨(さい)
とりで。小さな城。
(『三国志 図南の巻』陣前公用の美酒)
●崔毅(さいき)
帝と陳留王(ちんりゅうおう)と二人でいたところを保護した。
●細作(さいさく)
忍びの者のこと。
(『三国志 群生の巻』関羽一杯の酒)
(『三国志 臣道の巻』丞相旗)
(『三国志 出師の巻』孔明を呼ぶ)
(『三国志 出師の巻』蜀呉修交)
(『三国志 出師の巻』鹿と魏太子)
●祭酒(さいしゅ)
学政の長官。
(『三国志 出師の巻』石兵八陣)
●済南(さいなん)
青州南西郡の国。
●蔡邕(さいよう)
後漢末を代表する儒学者。かつて無理やり董卓に招聘された。
(『三国志 図南の巻』絶妙好辞)
●坐臥(ざが)
すわることと寝ること。日常の立ち居。
(『三国志 臣道の巻』雷鼓)
●逆茂木(さかもぎ)
戦場や防衛拠点で先端を尖らせた木の枝を外に向けて並べて地面に固定し、敵を近寄らせないようにした障害物のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』奇計)
(『三国志(七)望蜀の巻』渭水を挟んで)
●朔日(さくじつ)
陰暦で、月の第一日のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』雷鼓)
●作戦(さくせん)
青州で行われた黄巾賊との戦いの作戦
鄒靖・劉備軍 vs 黄巾賊
総軍のうち、関羽は約千の兵で右翼となり、張飛も同数の兵力で丘の陰にひそんだ。本軍の鄒靖と劉備とは、正面からすすみ、敵の主勢力へ、総攻撃の態を示し、頃あいを計って、わざと、潮のごとく逃げ乱れた。
賊の大軍は、陣形もなく追撃してきた。
劉備は、駒を返して、充分誘導してきた敵へ当り始めた時、丘陵の陰や、曠野(こうや)の黍(きび)の中から、関羽、張飛の両軍が、敵の主勢力を、完全にふくろづつみにした。
逃げる賊軍は追って、青州の城下まで迫った。
青州の城兵は、城門をひらいて、討って出た。
なだれを打って、逃げてきた賊軍は、城下に火を放ち、自分のつけた炎を墓場として、ほとんど、自滅するかのような敗亡を遂げてしまった。
●冊立(さくりつ)
勅命によって皇后・皇太子などを立てること。
(『三国志(八)図南の巻』柑子と牡丹)
●左賢王(さけんおう)
匈奴(北方の異民族)において、単干(君主)の後継者が就く地位のこと。
(『三国志(五)孔明の巻』野に真人あり)
●叉手(さしゅ)
両手を胸の前で重ね合わせること。
(『三国志(五)孔明の巻』立春大吉)
●さだめし
さぞかし。間違いなく。きっと。
(『三国志(四)臣道の巻』雷鼓)
(『三国志 図南の巻』鵞毛の兵)
●嗟嘆(さたん)
感心してほめること。
(『三国志 出師の巻』蛮娘の踊り)
●颯(さつ)
風の吹くさま。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●蹉跌(さてつ)
事が見込みと食い違って、うまく進まない状態になること。
(『三国志 孔明の巻』于吉仙人)
(『三国志 五丈原の巻』竈)
●さなきだに
ただでさえ。
(『三国志 図南の巻』正月十五夜)
●左豊(さほう)
軍監として潁川(えいせん)の戦況の検分に来た際、盧植から賄賂をあたえられなかったため、盧植の軍務ぶりに不届きありとして、都に報告した。
●さまで
それほどまで。
(『三国志(八)図南の巻』魏延と黄忠)
●讒(ざん)
事実にないことを言って他人をおとしいれる。
(『三国志 五丈原の巻』木牛流馬)
●傘蓋(さんがい)
馬車の上に取り付けられた傘。
(『三国志 出師の巻』冬将軍)
●三竿(さんかん)
竹ざおを3本つないだほどの高さの意から、日や月が空高く昇っていること。
●慚愧(ざんき)
自分の行為を反省して恥じること。
(『三国志 孔明の巻』臥龍の岡)
(『三国志 出師の巻』鬢糸の雪)
(『三国志 出師の巻』この一戦)
●讒言(ざんげん)
他人をおとしいれるため、ありもしない事を目上の人に告げ、その人を悪く言うこと。
(『三国志 図南の巻』漢中併呑)
●斬罪(ざんざい)
うちくび。
(『三国志 五丈原の巻』竈)
●讒者(ざんしゃ)
人をおとしいれようとして、事実に反する悪口を言う者。
(『三国志 出師の巻』七歩の詩)
●讒する(ざんする)
他人をおとしいれるため、ありもしない事を目上の人に告げ、その人を悪く言うこと。
(『三国志 図南の巻』鶏肋)
●三嘆(さんたん)
深く感心すること。
(『三国志』序)
●算なし(さんなし)
数えきれないほど多い。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
し
●市尹(しいん)
市を治める者。
(『三国志(五)孔明の巻』于吉仙人)
●四海(しかい)
天下全域のこと。
(『三国志(七)望蜀の巻』孟徳新書)
●而して(しかして)
そうして。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●時艱(じかん)
その時勢で当面している難問題。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●司空(しくう)
三公(宰相)の第三位。俸禄は一万石。土木・治水を司る。
●司空曹掾(しくうそうじょう)
正しくは司空東曹掾、ないし西曹掾。司空府で人事を司る属吏。この時の司空は曹操である。
(『三国志(三)草莽の巻』両虎競食の計)
●使君(しくん)
刺史・州牧への敬称。
(『三国志 草莽の巻』禁酒砕杯の約)
●指呼(しこ)
呼べば答えるほどの近い距離。
(『三国志(八)図南の巻』馬超と張飛)
●爾後(じご)
その後。
(『三国志(三)草莽の巻』淯水は紅し)
●子貢(しこう)
孔子の弟子のひとり。弁舌に優れ、商才に恵まれた。
(『三国志(五)孔明の巻』琴を弾く高士)
●伺候(しこう)
貴人のそば近くに居て仕えること。
(『三国志(九)出師の巻』曹操死す)
●錣(しころ)
かぶとの左右や後ろにたれて首をおおうもの。後頭部から首を守るためにある。
(『三国志 群生の巻』死活往来)
(『三国志 五丈原の巻』木門道)
●爾今(じこん)
今後。
(『三国志 草莽の巻』巫女)
●刺史(しし)
州の監察官および行政長官。俸禄は六百石。本来の職務は、州の監察であったが、後漢末には州の行政を司る事例もみられる。
●嗣子(しし)
親のあとをつぐ子。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●獅子吼(ししく)
大いに雄弁を振るうこと。
(『三国志(八)図南の巻』漢中王に昇る)
(『三国志(九)出師の巻』建業会議)
●自若(じじゃく)
少しもあわてない様子。
(『三国志(五)孔明の巻』十面埋伏)
●死生命アリ、富貴天ニアリ(しせいめいあり、ふうきてんにあり)
生死や富貴は天命によるもので、人力の及ぶ所ではない。『論語』顔淵篇の言葉
(『三国志(五)孔明の巻』食客)
●咫尺(しせき)
わずかの距離。
(『三国志 図南の巻』漢中併呑)
(『三国志 出師の巻』淮河の水上戦)
●紫髯(しぜん)
赤茶けたひげ。
(『三国志(九)出師の巻』草喰わぬ馬)
●使嗾(しそう)
さしずして、そそのかすこと。
(『三国志(三)草莽の巻』大江の魚)
●耳朶(じだ)
耳たぶ。
(『三国志(五)孔明の巻』孫権立つ)
●七旬(しちじゅん)
七十歳。
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
●侍中(じちゅう)
皇帝の侍従官の一つ。俸禄は比二千石。皇帝の左右に侍って諮問に応じる。
(『三国志 桃園の巻』赤兎馬)
●輜重(しちょう)
軍隊が携行する兵糧・武器・被服などの軍用物資。
(『三国志 草莽の巻』仲秋荒天)
(『三国志 赤壁の巻』臨戦第一課)
(『三国志 図南の巻』趙子龍)
(『三国志 図南の巻』次男曹彰)
(『三国志 出師の巻』輸血路)
(『三国志 五丈原の巻』高楼弾琴)
●執金吾(しつきんご)
洛陽において宮殿外の警護を司る。俸禄は中二千石。その華やかさに、若き日の光武帝が憧れを抱いたという。
(『三国志(二)群生の巻』天颷)
●嫉視(しっし)
ねたみ憎む気持で見ること。
(『三国志(六)赤壁の巻』臨戦第一課)
●司徒(しと)
三公(宰相)の第二位。俸禄は一万石。民政全般を司る。前漢において丞相から改称。
●司馬祭酒(しばさいしゅ)
後漢・三国には実在しない職名。司馬の参謀役という意味になろう。
(『三国志 草莽の巻』両虎競食の計)
●棍(しもと)
木の棒。
(『三国志 出師の巻』心縛)
●紗(しゃ)
綟り織(もじりおり)で織られた、薄く透き通る絹織物。
(『三国志 五丈原の巻』死せる孔明、生ける仲達を走らす)
●蹂躙(じゅうりん)
ふみにじること。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●車騎将軍(しゃきしょうぐん)
大将軍・驃騎将軍に次ぐ第三位の将軍号。その格式は、文官の三公(大尉・司徒・司空という三人の宰相)に匹敵する。
●尺(しゃく)
漢の時代、一尺は23-24cm程度。
●寂然(じゃくねん)
ひっそりとして静かなさま。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●爵禄(しゃくろく)
爵位と俸禄のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』陳大夫)
●麝香(じゃこう)
雄のジャコウジカの腹部にある香嚢から得られる分泌物を乾燥した香料。
(『三国志(二)群生の巻』人間燈)
●奢侈(しゃし)
度を過ぎてぜいたくなこと。
(『三国志(三)草莽の巻』名医)
●社稷(しゃしょく)
社は土地の神で、稷は五穀の神。社稷の祭祀は、古代中国において君主が執り行う重要な祭祀の一つであった。このため、転じて国家そのものを指す言葉ともなった。
朝廷または国家のこと。
(『三国志 桃園の巻』十常侍)
(『三国志 桃園の巻』赤兎馬)
(『三国志 群生の巻』絶纓の会)
(『三国志 群生の巻』大権転々)
(『三国志 臣道の巻』秘勅を縫う)
(『三国志 出師の巻』桃園終春)
●尺蠖(しゃっかく)
シャクトリムシの別名で、将来の成功のために一時の不遇に耐えることのたとえ。
(『三国志 五丈原の巻』具眼の士)
●這般(しゃはん)
このたび。
(『三国志 臣道の巻』一書十万兵)
●蛇矛(じゃぼこ)
刃が蛇行した槍。
張飛の蛇矛は長さ一丈八尺と称され、「丈八蛇矛」「丈八点鋼矛」ともいう。長さはおよそ五・六メートルとなる。
●衆寡(しゅうか)
多数と少数のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』好敵手)
●周公(しゅうこう)
周公旦(しゅうこうたん)のこと。周の創業を支えた宰相。
(『三国志(八)図南の巻』日輪)
●秀才(しゅうさい)
漢代の官僚登用制度のひとつ。茂才ともいう。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●周章(しゅうしょう)
あわてふためくこと。
(『三国志 出師の巻』この一戦)
●十常侍(じゅうじょうじ)
十人の内官のこと。民間の者は、彼らを宦官(かんがん)と称した。
君側の権をにぎり、後宮(こうきゅう)にも勢力があった。
議郎(ぎろう)張譲(ちょうじょう)、議郎(ぎろう)趙忠(ちょうちゅう)、議郎(ぎろう)段珪(だんけい)、議郎(ぎろう)夏輝(かき)などという十名が中心。
●秋霜厳烈(しゅうそうげんれつ)
秋霜とは、(秋の霜が草木を枯らすところから)刑罰・権威の厳しさや意志の堅さなどのたとえ。厳烈とは、きびしく激しいこと。
(『三国志(三)草莽の巻』梅酸・夏の陣)
●戎馬(じゅうば)
軍馬。
(『三国志 出師の巻』雁のみだれ)
●首魁(しゅかい)
謀反をたくらむ中心人物。
●宿痾(しゅくあ)
持病。
(『三国志(九)出師の巻』建業会議)
●豎子(じゅし)
未熟な者をさげすんで言う語。こども、青二才などと、相手を罵る言葉。
(『三国志(一)桃園の巻』転戦)
(『三国志(一)桃園の巻』白面郎「曹操」)
(『三国志(二)群生の巻』洛陽落日賦)
(『三国志(三)草莽の巻』増長冠)
(『三国志(四)臣道の巻』玄徳冀州へ奔る)
(『三国志(五)孔明の巻』霹靂車)
(『三国志(九)出師の巻』鬢糸の雪)
●儒生(じゅせい)
儒学をおさめる者。
(『三国志 出師の巻』一書生)
●出来(しゅったい)
事件が持ち上がること。
(『三国志(八)図南の巻』老将の功)
●出廬(しゅつろ)
隠遁(いんとん)していた人が、再び世間に出て活躍すること。
(『三国志 五丈原の巻』鶏家全慶)
●峻拒(しゅんきょ)
きびしく拒絶すること。
(『三国志(八)図南の巻』鶏肋)
●逡巡(しゅんじゅん)
決心がつかず、ためらうこと。
(『三国志 出師の巻』蜀また倣う)
●城門の校尉(じょうもんのこうい)
洛陽城の城門警備を担当する武官。俸禄は比二千石。
(『三国志(二)群生の巻』洛陽落日賦)
●朱雋(しゅしゅん)
潁川(えいせん)で、黄巾賊である張宝(ちょうほう)・張梁(ちょうりょう)の討伐に向かっていた。
●主簿(しゅぼ)
将軍府や州郡などに置かれた属吏。文書行政をつかさどる。
(『三国志(八)図南の巻』剣と戟と楯)
●須臾(しゅゆ)
しばらくの間。
(『三国志 五丈原の巻』高楼弾琴)
●珠簾(しゅれん)
珠で飾った美しいすだれのこと。
(『三国志 群生の巻』天颷)
(『三国志 臣道の巻』風の便り)
(『三国志 出師の巻』冬将軍)
●峻厳(しゅんげん)
非常にきびしいこと。
(『三国志 図南の巻』成都陥落)
●峻酷(しゅんこく)
非常に厳しく、情けも容赦もないこと。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●春秋(しゅんじゅう)
五経の一つで、春秋時代に魯の年代記を孔子が筆削したものとされる。『春秋』の注のうち、関羽は『春秋左氏伝』に精通していたとされ、関帝廟の像も多く『春秋左氏伝』を携えている。
(『三国志 臣道の巻』避客牌)
●醇朴(じゅんぼく)
すなおで飾りけがないこと。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●相(しょう)
相とは国相。俸禄は二千石。諸侯王の宰相であったが、後漢末には郡と同等の「国(コク)」の行政長官である。
●丈(じょう)
長さの単位。漢の時代の1丈はおよそ231cmといわれている。
●小安(しょうあん)
少し安心であること。
(『三国志 五丈原の巻』七盞燈)
●蕭何(しょうか)
前漢の高祖劉邦の功臣。内政を掌握し戦いを支え、補給を絶やさず前線の劉邦を援けた。天下統一後は相国として輔政した。
(『三国志 臣道の巻』奇舌学人)
(『三国志 赤壁の巻』鈴音)
●哨戒(しょうかい)
敵の侵入や襲撃に備えて警戒すること。
(『三国志 五丈原の巻』麦青む)
●傷寒(しょうかん)
高熱を伴う疾患。
(『三国志 出師の巻』鹿と魏太子)
●床几(しょうぎ)
折り畳み式の腰掛け。
(『三国志 望蜀の巻』渭水を挟んで)
●猖獗(しょうけつ)
悪いことがはびこること。
(『三国志 臣道の巻』風の便り)
(『三国志 赤壁の巻』出廬)
●上元(じょうげん)
陰暦正月15日の称。この日、小豆がゆを食べると一年中の災いを避けられるとされる。
(『三国志 臣道の巻』太医吉平)
●定業(じょうごう)
前世から定まっている善悪の業に対して受けるむくい。
(『三国志 図南の巻』魏延と黄忠)
●相国(しょうこく)
三公の上位に置かれる非常設の最高職。太傅と異なり、皇帝が幼少とは限らず、宰相として実権を掌握する。高祖劉邦の功臣である曹参以来、董卓まで任命されていなかった。
(『三国志 桃園の巻』赤兎馬)
(『三国志 図南の巻』御林の火)
●蕭殺(しょうさつ)
もの寂しいさま。
(『三国志 出師の巻』石兵八陣)
●常山真定(じょうざんしんてい)
常山国は冀州北西部の一国。真定はその属県。
(『三国志 群生の巻』白馬将軍)
●小祠(しょうし)
小さいやしろ。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●尚書(しょうしょ)
後漢の事実上の中央政府となっていた尚書台を構成する中央官僚。尚書台の三等官。俸禄は六百石と低いが、権力は大きかった。
(『三国志 桃園の巻』赤兎馬)
(『三国志 図南の巻』柑子と牡丹)
●猩々(しょうじょう)
古くに中国から伝わった想像上の動物。オランウータンに似るが、 髪は赤く長く垂れ、体は赤い毛に覆われ、顔と足は人間に似ている。 人語を話し、酒を好む。
(『三国志 出師の巻』孟獲)
(『三国志 出師の巻』女傑)
●襄城(じょうじょう)
許昌西南に位置する。
(『三国志 臣道の巻』奇舌学人)
●尚書令(しょうしょれい)
後漢の事実上の中央政府となっていた尚書台の長官。大きな権限を持つ。俸禄は千石。
(『三国志 草莽の巻』両虎競食の計)
●尚書郎(しょうしょろう)
尚書台に属する下級官人。俸禄は四百石。
(『三国志(三)草莽の巻』改元)
●小人珠を抱いて罪あり(しょうじんたまをいだいてつみあり)
もとは罪のない者も、分不相応なものを持つと罪禍を招くこと。出典は『春秋左氏伝』桓公十年
(『三国志(三)草莽の巻』陳大夫)
●頌する(しょうする)
文章や言葉で人の功績などをほめたたえること。
(『三国志 図南の巻』柑子と牡丹)
(『三国志 出師の巻』武祖)
●悄然(しょうぜん)
元気がない様子。
(『三国志 出師の巻』七歩の詩)
●檣頭(しょうとう)
帆柱のさき。
(『三国志 赤壁の巻』呉の情熱)
(『三国志 望蜀の巻』降参船)
●小覇王(しょうはおう)
出身を共にする「覇王」項羽に次ぐものという意味。
(『三国志 草莽の巻』小覇王)
●上表(じょうひょう)
君主に文書を奉ること。
(『三国志 五丈原の巻』松に古今の色無し)
●尚父(しょうふ)
周の建国を助けた太公望の尊称。
(『三国志 群生の巻』牡丹亭)
●縄墨(じょうぼく)
規則。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●慫慂(しょうよう)
そばから誘いかけ勧めること。
(『三国志 五丈原の巻』総兵之印)
●襄陽(じょうよう)
荊州南軍に属する県。劉表は荊州刺史として襄陽を本拠とした。
(『三国志 群生の巻』溯江)
●擾乱(じょうらん)
乱れ騒ぐこと。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●小吏(しょうり)
地位の低い役人のこと。
(『三国志 出師の巻』王風万里)
●燭(しょく)
照明用にともす火。
(『三国志 出師の巻』成都鳴動)
●嘱目(しょくもく)
注目。
(『三国志 出師の巻』呂蒙と陸遜)
●如才(じょさい)
手抜かり。
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
●如才ない(じょさいない)
気がきいていて抜かりがないさま。
(『三国志(三)草莽の巻』仲秋荒天)
(『三国志(四)臣道の巻』鸚鵡州)
●庶子(しょし)
正妻でない女から生まれた子。
(『三国志(九)出師の巻』月落つ麦城)
●書肆(しょし)
本屋や出版社のこと。
(『三国志』序)
●初平元年(しょへいがんねん)
西暦一九〇年
●爾来(じらい)
それ以来。
(『三国志(三)草莽の巻』平和主義者)
●司隷校尉(しれいこうい)
漢の十三州のうち、首都圏を形成する司隷部の行政、および中央官を含めた監察を司る要職。俸禄は比二千石。
●深遠(しんえん)
内容・意味が奥深く、はかりしれないさま。
(『三国志(八)図南の巻』敗将)
●秦王(しんおう)
秦の始祖である始皇帝。王とするは貶称。六国を滅ぼした。
(『三国志(六)赤壁の巻』舌戦)
●宸襟(しんきん)
天子の心。
(『三国志 出師の巻』鹿と魏太子)
●人傑(じんけつ)
知識・才能が目立ってすぐれた人のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』奇舌学人)
●唇歯(しんし)
互いに利害関係が密接であること。
(『三国志 出師の巻』蜀呉修交)
●唇歯の交わり(しんしのまじわり)
唇と歯のように、非常に近しいことの喩え
(『三国志(三)草莽の巻』空腹・満腹)
●斟酌(しんしゃく)
先方の事情をくんでやること。
(『三国志(八)図南の巻』鶏肋)
●振粛(しんしゅく)
緩んだ気風などをふるい起こし、引き締めること。
(『三国志 出師の巻』建艦総力)
●神農(しんのう)
伝説の聖王。農耕を教え、百草を自分の身体で試して製薬の基礎を定めたとされる。
(『三国志 桃園の巻』黄巾賊)
●晋文匡扶(しんぶんきょうふ)
晋の文公が周の襄王を助け覇者となったこと。
●岑彰(しんほう)
後漢の光武帝劉秀を助けた名将。光武帝の功臣「雲台二十八将」に数えられる。
(『三国志(四)臣道の巻』奇舌学人)
す
●綏遠(すいえん)
現在の内モンゴル自治区西部に相当する。
(『三国志(七)望蜀の巻』馬騰と一族)
●垂教(すいきょう)
教えを説き示すこと。
(『三国志(六)赤壁の巻』孔明・風を祈る)
●垂涎(すいぜん)
ある物を手に入れたいと熱望すること。
(『三国志 草莽の巻』大江の魚)
(『三国志 出師の巻』蛮娘の踊り)
●数奇(すうき)
ふしあわせ。
(『三国志 出師の巻』改元)
●鄒靖(すうせい)
劉焉の家臣。校尉(こうい)。
青州大興山(たいこうざん)にいる黄巾賊の討伐に向かった。
●饐える(すえる)
腐ったような酸っぱい臭いのするさま。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●眇る(すがめる)
片目を細くする。
(『三国志(八)図南の巻』柑子と牡丹)
●素寒貧(すかんぴん)
貧乏で何も持たないこと。
(『三国志(四)臣道の巻』太医吉平)
●寸毫(すんごう)
ほんのわずか。
(『三国志 草莽の巻』名医)
(『三国志 出師の巻』建業会議)
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
せ
●清雅縹渺(せいがひょうびょう)
清雅とは、清らかで上品な趣があること。縹渺とは、果てしなく、広々としたさまのこと。
(『三国志(三)草莽の巻』火星と金星)
●旌旗(せいき)
はた。
(『三国志 出師の巻』蛮娘の踊り)
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
●正議郎(せいぎろう)
皇帝の近侍官。俸禄は六百石。
(『三国志(三)草莽の巻』火星と金星)
●成皐(せいこう)
司隷河南尹の一県。洛陽の真東に位置する。よって『三国志演義』が、洛陽を西に発した曹操がここを通るとするのは誤りである。
(『三国志(二)群生の巻』偽忠狼心)
●性行淑均(せいこうしゅくきん)
性質や行為が善良で片寄っていないさま。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●世子(せいし)
あとつぎである子。
(『三国志(六)赤壁の巻』蜂と世子)
(『三国志(八)図南の巻』漢中王に昇る)
●青史(せいし)
歴史のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』一書十万兵)
●青州の兵(せいしゅうのへい)
曹操は兗州時代、青州黄巾の兵三十万、民百万を降し、その精鋭を「青州兵」に編成した兵のこと。第二巻「秋雨の頃」を参照。
(『三国志(三)草莽の巻』淯水は紅し)
●星霜(せいそう)
年月。星は1年に天を1周し、霜は毎年降ることから。
●悽愴(せいそう)
非常にいたましいさま。
(『三国志(四)臣道の巻』雷鼓)
●西曹掾(せいそうのえん)
三公府の属官で、人事を司る。俸禄は比四百石。
(『三国志(六)赤壁の巻』臨戦第一課)
●清澄(せいちょう)
澄みきっていて清らかなこと。
(『三国志(八)図南の巻』敗将)
●腥風(せいふう)
血なまぐさい風。殺伐な気配のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』小児病患者)
●青龍刀(せいりゅうとう)
柄の先端が龍首につくられている刀。
関羽の青龍偃月刀は重さ八十二斤と称され、明代の度量衡では、およそ四十九キログラムとなる。
●西涼(せいりょう)
後漢の武威郡にあたる。涼州の中央部付近。
●赤心(せきしん)
うそいつわりのない心。
(『三国志(六)赤壁の巻』出廬)
●赤兎(せきと)
稀代の名馬。馬体は真っ赤。
一日に千里を走るといわれている。
●寂寞(せきばく)
ものさびしく静まっていること。
(『三国志(九)出師の巻』国葬)
●寂寥(せきりょう)
ものさびしい様子・感じ。
(『三国志 出師の巻』武祖)
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●勢子(せこ)
狩猟に際して野獣を追い出したり包囲して一方に誘導する人々。
(『三国志(九)出師の巻』蜀山遠し)
●節鉞(せつえつ)
威信を表わすために、出征する大将軍に皇帝みずから賜わったまさかり。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●斥候(せっこう)
敵情、地形その他の諸種の状況を偵察・捜索するため、部隊から派遣する小兵力の人員。
(『三国志(八)図南の巻』一股傷折)
●切歯(せっし)
歯ぎしりすること。きわめて無念に思うこと。
(『三国志 出師の巻』白帝城)
●切歯扼腕(せっしやくわん)
歯をくいしばり、自分の腕を握りしめて、ひどくくやしがったり怒ったりすること。
(『三国志(八)図南の巻』正月十五夜)
●拙戦(せっせん)
へたな戦いをすること。
(『三国志(九)出師の巻』鬢糸の雪)
●切歯(せっぱ)
はぎしり。転じて、きわめて無念に思うこと。
(『三国志(八)図南の巻』陣前公用の美酒)
●ぜひなく
どうにもしようがない。
(『三国志(五)孔明の巻』臥龍の岡)
●箭(せん)
矢のこと。
(『三国志 出師の巻』歩く木獣)
●僭越(せんえつ)
自分の身分・地位を越えて、出過ぎた事をすること。
(『三国志(五)孔明の巻』自壊闘争)
●詮議(せんぎ)
評議して物事を明らかにすること。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●千載(せんざい)
一千年。
(『三国志 五丈原の巻』松に古今の色無し)
●僭称(せんしょう)
身分を越えて勝手に称号をとなえること。
(『三国志 図南の巻』正月十五夜)
(『三国志 図南の巻』漢中王に昇る)
(『三国志 五丈原の巻』総兵之印)
●戦捷(せんしょう)
戦いに勝つこと。
(『三国志 出師の巻』国葬)
●前将軍(ぜんしょうぐん)
大将軍・驃騎将軍・車騎将軍・衛将軍に次ぐ高位の将軍号。前・後・左・右とあり、格式は九卿(大臣)に匹敵する。
●鮮卑(せんぴ)
北方の異民族。後漢後半より、匈奴に代わって勢力を拡大しつつあった。
(『三国志 出師の巻』魚紋)
●宣撫(せんぶ)
占領地域などで、政府の方針を知らせるなどして、人心を安んずること。
(『三国志 出師の巻』毒泉)
(『三国志 五丈原の巻』七盞燈)
●戦袍(せんぽう)
鎧(よろい)の上に着る上衣。
(『三国志 孔明の巻』于吉仙人)
●銭糧使(せんりょうし)
「原書」とされる『通俗三国志』は、「毛玠、任峻を典農中郎将、催督銭糧使とし……」としており、そこでの催督は官名の一部。ただし、後漢・三国には実在しない職名。これを人名とするのは吉川本の誤り。
(『三国志 草莽の巻』両虎競食の計)
●浅陋(せんろう)
知識や考えがあさくてせまいこと。
(『三国志 出師の巻』遺孤を託す)
そ
●叢(そう)
くさむら。
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
●草芥(そうかい)
くさとごみ。
(『三国志 図南の巻』趙子龍)
●早暁(そうぎょう)
夜が明けるころ。
(『三国志 出師の巻』曹操死す)
●聡慧(そうけい)
才知にすぐれること。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●壮語(そうご)
意気の盛んなことを言うこと。
(『三国志 図南の巻』休戦)
●倉皇・愴惶(そうこう)
あわてふためくこと。
(『三国志 草莽の巻』空腹・満腹)
(『三国志 孔明の巻』兄弟再会)
(『三国志 赤壁の巻』新野を捨てて)
(『三国志 赤壁の巻』殺地の客)
(『三国志 望蜀の巻』荊州往来)
(『三国志 図南の巻』御林の火)
(『三国志 出師の巻』荊州変貌)
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
●相剋(そうこく)
対立するものが互いに相手に勝とうと争うこと。
(『三国志 出師の巻』国葬)
●曹参(そうさん)
前漢建国の功臣。もとは沛国の小役人だったが、劉邦に従って功績を立て、武官では功臣の筆頭となる。
天下統一後は、蕭何(しょうか)を継いで相国に任じられ、賢相として讃えられた。
陳寿の『三国志』は、曹操を曹参の末裔としている。
(『三国志 赤壁の巻』舌戦)
●騒擾(そうじょう)
騒いで秩序を乱すこと。
(『三国志 図南の巻』御林の火)
●曹嵩(そうすう)
曹操の父。
陳留(ちんりゅう)に住んでいる。
宮内官たりし職を辞して、野に下っている。
●宗正卿(そうせいけい)
九卿(大臣)の一つ。諸王・宗室に関する諸事の管理を司る。俸禄は中二千石。宗室の者が就任する。
(『三国志(四)臣道の巻』許田の猟)
●鏘々(そうそう)
玉や金属が触れ合って鳴り響くさま。
(『三国志 臣道の巻』丞相旗)
●臧否(ぞうひ)
よしあしを批判すること。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●壮丁(そうてい)
労役や軍役に服せられる者。
(『三国志 五丈原の巻』西部第二戦線)
●宗廟(そうびょう)
祖先の廟。宗廟は古代中国において重要な祭祀対象であり、天子は七廟を祭祀の対象とした。
●蹌踉(そうろう)
足もとが定まらず、ふらふらとよろけるさま。
(『三国志 臣道の巻』火か人か)
(『三国志 図南の巻』御林の火)
●溯江(そこう)
川をさかのぼること。
(『三国志 望蜀の巻』荊州往来)
●粗忽者(そこつもの)
そそっかしい人のこと。
(『三国志 臣道の巻』雷怯子)
●其許(そこもと)
そなた。
(『三国志 臣道の巻』鬮)
●誹(そしり)
悪口のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』健啖天下一)
●蘇秦(そしん)
戦国時代に合従(がっしょう)の外交策を説いた縦横家。
(『三国志(六)赤壁の巻』舌戦)
●蘇双(そそう)
馬商人(あきんど)。
張世平(ちょうせいへい)はおじにあたる。
軍資金がなく、急仕立ての劉備軍に、馬匹金銀を献上している。
●足下(そっか)
貴殿。
(『三国志 臣道の巻』鬮)
(『三国志 臣道の巻』不戦不和)
●率土(そっと)
国土の果て。
(『三国志 出師の巻』蜀また倣う)
●鼠輩(そはい)
ねずみのようにとるにたりない、つまらない人間。
(『三国志 出師の巻』草喰わぬ馬)
●孫堅(そんけん)
孫堅(そんけん)、字(あざな)は文台(ぶんだい)。
官は下邳(かひ)の丞(じょう)。
呉郡富春(ごぐんふしゅん)の産。孫子が末葉。
[容姿]
広額(こうがく)、濶面(かつめん)、唇は丹(たん)のようで、眉は峨眉山(がびさん)の半月のごとく高くして鋭い。
(『三国志(一)桃園の巻』秋風陣)
・・・
長沙の太守(たいしゅ)。
[エピソード]
孫堅が十七歳の頃。父に伴われて、銭塘(せんとう)地方へ旅行した。当時、銭塘地方の港場は、海賊が横行(おうこう)していた。ある夕べ、孫堅が父と共に、港を歩いていると、海岸で何十人という海賊どもが、財貨を山分けするので騒いでいた。孫堅は、それを見かけると、いきなり剣を抜いて、海賊の群れへ躍り入り、賊の頭目を真二つに斬り、暴れまわった。賊は逃げてしまった。ために、山と積まれてあった盗難品の財宝は、被害者の手にかえった。その中には、銭塘の富豪が家宝とした宝石の匣(こばこ)などもあった。けれど孫堅は、一物も礼など受けなかった。以来、孫堅の名は、南方にひびいた。
(『三国志(二)群生の巻』江東の虎)
・・・
[子]
孫堅の正室である呉氏とのあいだには、
長男の孫策、字(あざな)は伯符(はくふ)。
第二子孫権、字は仲謀(ちゅうぼう)。
第三男、孫翊(そんよく)。
第四男、孫匡(そんきょう)。などの男ばかり。
呉氏の妹にあたる孫堅の寵姫(ちょうき)からは、
孫朗(そんろう)という男子と、
仁(じん)という女子。
兪氏(ゆし)という寵妾(ちょうしょう)には、
孫韶(そんしょう)、字は公礼(こうれい)。
(『三国志(二)群生の巻』溯江)
・・・
孫堅は、劉表軍の策にはまり、断崖から落ちてきた巨大な磐石の下で、圧死した。
その時、年三十七歳。初平三年の辛未(かのとひつじ)、十一月七日の夜だった。
(『三国志(二)群生の巻』石)
●孫呉の兵(そんごのへい)
ここでは、春秋時代に呉の孫武が著した『孫子』と、戦国時代に楚の呉起が著した『呉子』という二つの兵法書のこと。『孫子』は、現在も、魏武注(曹操の注)により読まれている。
●孫仲(そんちゅう)
韓忠(かんちゅう)・趙弘(ちょうこう)とともに宛城にたて籠っていた黄巾賊の残党。
宛城で劉備に矢で頸(うなじ)を射ぬかれた。
●村夫子(そんぷうし)
田舎学者のこと。夫子は、孔子(孔夫子)をさす。
た
●太尉(たいい)
三公(宰相)の筆頭。俸禄は一万石。軍事を司る。
●大廈(たいか)
大きな建物。
(『三国志(八)図南の巻』酒中別人)
●大義親を滅す(たいぎしんをめっす)
大いなる道義のために親縁を捨てること。『春秋左氏伝』隠公四年の言葉。
(『三国志(九)出師の巻』鬢糸の雪)
●大逆(たいぎゃく)
人の道にそむく最も悪質な行為。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●太子(たいし)
皇帝の後継ぎの皇子。
(『三国志 出師の巻』武祖)
(『三国志 出師の巻』鹿と魏太子)
●太史官(たいしかん)
太史令のこと。官秩は六百石。天文・星暦をつかさどり、吉凶を判別した。
(『三国志(八)図南の巻』神卜)
●大司馬(だいしば)
後漢初では三公のひとつ。前漢では霍光が就き、国政を担当した官職。
(『三国志(二)群生の巻』毒と毒)
●太守(たいしゅ)
郡の長官。俸禄より二千石とも呼ぶ。漢代の行政区間は、県の上に郡が置かれ、郡の上に本来監察区間であった州が置かれる。ただし、ここで州の長官を太守とするように、本書や『三国志演義』では、地方長官の呼称が混乱している。
●代州(だいしゅう)
後漢では幷州(へいしゅう)の東端部にあたる。
●大捷(たいしょう)
圧倒的に勝つこと。大勝のこと。
(『三国志(二)群生の巻』洛陽落日賦)
(『三国志(八)図南の巻』次男曹彰)
●太政太師(だいじょうたいし)
周代の三公の筆頭。前漢では三公の上に置かれたが(上公)、後漢時代には置かれていない。
(『三国志(二)群生の巻』牡丹亭)
●太史令(たいしれい)
天文・星暦を掌る。さらに、本来その記録であった史書を執筆する。俸禄は六百石。
(『三国志(三)草莽の巻』火星と金星)
●太白星(たいはくせい)
金星のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』火星と金星)
●太傅(たいふ)
三公の上位に置かれる非常設のの最高職。幼少の皇帝の教育・善導を行う。
●太僕(たいぼく)
九卿(大臣)の一つ。俸禄は中二千石。天子の車駕を管理する。
(『三国志(三)草莽の巻』緑林の宮)
●太牢(たいろう)
祭祀のときに捧げる、牛・羊・豕(ぶた)からなる最高の犠牲。
(『三国志(二)群生の巻』珠)
●高手小手(たかてこて)
逃亡できないように、両手を後ろに回し、首から肘、手首に縄をかけて厳重にしばりあげること。
(『三国志(四)臣道の巻』不戦不和)
●惰気(だき)
なまけごころ。
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
●涿県楼桑村(たくけんろうそうそん)
劉備の故郷。
戸数二、三百の小駅であったが、旅人の多くが、この宿場で驢(ろ)をつなぐので、相当に賑わっている。
この地は、太守(たいしゅ)劉焉(りゅうえん)の領内で、校尉(こうい)鄒靖(すうせい)という代官が役所をおいて支配していた。
夕方になると、村はずれの城門をかたく閉めて、旅人も居住者も、いっさいの往来は止めてしまう。城門の鉄扉(てっぴ)が閉まる時刻は、まっ赤な太陽が沈みかける頃で、望楼の役人が、六つの鼓(こ)を叩くのが合図。だからこの辺の住民は、そこの門のことを、六鼓門(こもん)と呼んでいた。
楼桑村という地名は、劉備の家にある桑の木が茂る時は、まるで緑の楼台のように見えるから、この樹から起ったといわれている。
●懦弱(だじゃく)
いくじがないこと。
(『三国志 赤壁の巻』酔計二花)
(『三国志 出師の巻』白帝城)
●掌(たなごころ)
てのひら。
(『三国志(二)群生の巻』白馬将軍)
●懦夫(だふ)
おくびょうな男。
(『三国志(九)出師の巻』月落つ麦城)
●段珪(だんけい)
十常侍のひとり。儀郎。
●旦夕(たんせき)
差し迫っていること。
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
●短兵急(たんぺいきゅう)
ひどく急なさま。
(『三国志 出師の巻』孔明を呼ぶ)
ち
●痴(ち)
おろか。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●知己(ちき)
自分の心をよく知ってくれる人。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●遅疑逡巡(ちぎしゅんじゅん)
疑い迷い、ためらい迷ってすぐに決定を下さないこと。
(『三国志 五丈原の巻』木門道)
●知悉(ちしつ)
知りつくすこと。
(『三国志 草莽の巻』空腹・満腹)
●紂(ちゅう)
帝辛のこと。殷の最後の王。
(『三国志 図南の巻』酒中別人)
●忠諫(ちゅうかん)
臣下が主君を思い、いさめること。
(『三国志 群生の巻』洛陽落日賦)
●中山靖王劉勝(ちゅうざんせいおうりゅうしょう)
前漢の景帝の皇子で、中山国に封建された。酒と音楽を好み、百二十人の男子に恵まれた。
●注進(ちゅうしん)
事件が起こった時、それを急いで報告すること。
(『三国志 図南の巻』趙子龍)
●中太夫(ちゅうたいふ)
太中大夫(たいちゅうたいふ)のこと。皇帝の補佐官で状況に応じた任務を与えられる。俸禄は千石。
(『三国志(六)赤壁の巻』許都と荊州)
●中天(ちゅうてん)
天の中心。
(『三国志(八)図南の巻』神卜)
●誅伐(ちゅうばつ)
罪のある者を攻めて討つこと。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●中部掾史(ちゅうぶえんし)
河南中部掾は、江南尹に属する吏。督郵と同じく諸県を監察する。
●中平(ちゅうへい)
中平六年は、西暦一八九年。中平は、黄巾の乱の平定を祝って制定された元号。
●中牟県(ちゅうぼうけん)
司隷河南尹の一県。
(『三国志(二)群生の巻』偽忠狼心)
●中郎将(ちゅうろうしょう)
武官の官職名。将軍に次ぐ。郎官(皇帝の近侍官)を統率して軍事にあたる。俸禄は比二千石。
●町(ちょう)
およそ109m。
(『三国志 群生の巻』偽忠狼心)
●徴(ちょう)
事実のおこる前ぶれ。
(『三国志 五丈原の巻』秋風五丈原)
●鳥雲(ちょううん)
鳥のように散じ、雲のように集まる、散開と集合が自在である陣形。中国古代の兵法書『六韜(りくとう)』豹韜の巻に記される。
●趙雲(ちょううん)
趙雲(ちょううん)、字(あざな)は子龍(しりゅう)。
常山真定(じょうざんしんてい)の生れ。
眉濃く、眼光は大。
袁紹の幕下にいたが、長く仕える主君でないと考え、故郷へ帰ろうとしていたところ、公孫瓚が文醜に追われているのをたすけた。その縁で、公孫瓚の軍に加わった。
(『三国志 群生の巻』白馬将軍)
●張角(ちょうかく)
・黄巾賊の総大将。大賢良師(だいけんりょうし)。
・鉅鹿郡(きょろくぐん)の人。眼がないほどの好物は茶。
・張角が、あるとき、山中へ薬をとりに入ったところ、道で異相の道士(どうし)に出会った。道士は張角に三巻の書物を授けた。張角は、再拝して、翁(おきな)の名を問うと、「我は南華老仙(なんかろうせん)なり」と答え、白雲となり飛び去った。張角は、この山中での出来事を、里の人々へ話した。里の人々は、張角に神仙が宿ったと真(ま)にうけて、たちまち張角を、救世の方師(ほうし)と崇(あが)め、触れまわった。
・或る年、悪疫(あくえき)が流行して、村にもおびただしい死人が出た。張角は草門(そうもん)を開いて、病人を救いに出たが、その時もう、彼の門前には、弟子にしてくれと、五百人の者がいた。五百人の弟子は、彼の命に依って、秘薬をたずさえ、悪疫の地を視て廻った。そして、張角方師の功徳(くどく)を語り聞かせ、秘薬を与えると、皆、数日を出でずして癒(なお)った。それでも、癒らぬ者は、張角が行って、呪(じゅ)を唱(とな)え、符水(ふすい)の法を施し、癒(なお)した。
・常に、結髪を黄色い巾きれでつつんでいた。
・弟は、張梁(ちょうりょう)、張宝(ちょほう)。
・曲陽で、董卓(とうたく)・皇甫嵩(こうほすう)の両軍と戦っている際、陣中で病没した。
●重器(ちょうき)
重要な人物。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●張儀(ちょうぎ)
戦国時代に連衡(れんこう)の外交策を説いた縦横家。
(『三国志 赤壁の巻』舌戦)
●張挙(ちょうきょ)
黄匪(こうひ)の乱がやんでから、張純(ちょうじゅん)とともに、漁陽(ぎょよう)で謀叛をおこした。
●聴許(ちょうきょ)
ききいれること。
(『三国志 出師の巻』呂蒙と陸遜)
●張均(ちょうきん)
郎中。
劉備とは、盧植(ろしょく)をおとしいれた左豊と共に、監軍の勅使として、征野へ巡察に行った際に知り合う。お互いに世事を談じたこともある間柄。
●長躯(ちょうく)
背の高いこと。馬で長い距離を走ること。
(『三国志 草莽の巻』両虎競食の計)
(『三国志 五丈原の巻』死せる孔明、生ける仲達を走らす)
●趙弘(ちょうこう)
孫仲(そんちゅう)・韓忠(かんちゅう)とともに宛城にたて籠っていた黄巾賊の残党。
宛城で孫堅に斬り捨てられた。
●趙高王莽(ちょうこうおうもう)
趙高は始皇帝の死後、実権を掌握した宦官。王莽は前漢の平帝期に実権を握り、新を建国した外戚。
●長史(ちょうし)
州では属吏の筆頭格。三公府や将軍府にも置かれる。
(『三国志 群生の巻』白馬将軍)
●丁子頭(ちょうじがしら)
灯心の燃えさしの頭にできる、丸いかたまりのこと。
(『三国志 臣道の巻』油情燈心)
●張子房(ちょうしぼう)
前漢建国の功臣、張良のこと。もとは韓の宰相の家系であったが、劉邦の軍師になると、秦、楚との戦いで奇謀をめぐらせて活躍した。
(『三国志 群生の巻』秋雨の頃)
●長袖者(ちょうしゅうしゃ)
公卿・僧・神官・学者などのこと。
(『三国志 臣道の巻』太医吉平)
●重棗(ちょうそう)
くすべた棗(なつめ)のような赤黒い顔色の表現。関羽の容貌の定型句である。
(『三国志 桃園の巻』打風乱柳)
●打擲(ちょうちゃく)
なぐること。
(『三国志(四)臣道の巻』不戦不和)
●牒文(ちょうぶん)
文書を記す薄いふだ(牒)に書かれた文。
●長揖(ちょうゆう)
丁重な敬礼のこと。
(『三国志(五)孔明の巻』立春大吉)
●長楽宮(ちょうらくきゅう)
皇太后が居住する宮殿
●張梁(ちょうりょう)
黄巾党の天公将軍(てんこうしょうぐん)。兄は張角(ちょうかく)。
陽城での戦いのとき、黄巾賊の厳政(げんせい)に首を斬られた。
●跳梁(ちょうりょう)
はびこって自由に動きまわること。
(『三国志 桃園の巻』黄巾賊)
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●儲君(ちょくん)
皇太子。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●陳大夫(ちんたいふ)
陳珪(ちんけい)のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』陳大夫)
●鎮東将軍(ちんとうしょうぐん)
方面軍司令官として一地方の軍事を司る将軍号。格式は征、鎮、安、平の順となり、後に東西南北が付される。
(『三国志(二)群生の巻』秋雨の頃)
●鴆毒(ちんどく)
鴆は毒を持つ鳥で、その羽を酒に浸すことで毒酒を精製した。人を殺す毒として、謀殺や処刑に用いられた。
●陳平(ちんぺい)
前漢の高祖劉邦の功臣。参謀として戦略を練った。
(『三国志(四)臣道の巻』奇舌学人)
●陳弁(ちんべん)
事情を述べて弁解すること。
(『三国志(四)臣道の巻』鸚鵡州)
●陳留(ちんりゅう)
曹操の父曹嵩(そうすう)がいる郷土。
(『三国志(二)群生の巻』江東の虎)
●陳留王(ちんりゅうおう)
劉協(協皇子)は陳留国を領有し、帝が即位してからは、陳留王と称している。
つ
●通家(つうか)
昔から親しく交わってきた家のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』一書十万兵)
●苞(つと)
わらなどを束ねて作った入れ物。
●夙に(つとに)
以前から。
(『三国志 出師の巻』武祖)
て
●廷尉(ていい)
九卿(大臣)の一つ。司法を掌る。俸禄は中二千石。
(『三国志(六)赤壁の巻』許都と荊州)
●程遠志(ていえんし)
黄巾賊。大方(だいほう)。
武器は、重さ八十斤と称する青龍刀。
張飛に斬られる。
●低徊(ていかい)
思いにふけりながら、ゆっくり歩きまわること。
(『三国志 五丈原の巻』死せる孔明、生ける仲達を走らす)
●丁管(ていかん)
尚書(しょうしょ)。現皇帝の廃位をたくらむ董卓を逆臣として殺そうとしたが、失敗に終わる。
●定州(ていしゅう)
後漢ではほぼ中山国にあたる。属県に安喜があった。
●丁峰(ていほう)
黄巾賊。洛陽船で茶を買っている劉備の姿を見ていた人物。李朱氾(りしゅはん)の手下。
●田横(でんおう)
楚と漢の争いの中で斉王となり、劉邦と争った群雄の一人。最後は、劉邦への降伏を恥じて自害した。
(『三国志(六)赤壁の巻』火中の栗)
●天嶮(てんけん)
地勢がけわしくなっている所。自然の要害。
(『三国志(二)群生の巻』溯江)
●殄寇将軍(てんこうしょうぐん)
雑号将軍のひとつ。賊を滅ぼすという意味を持つ。
(『三国志(三)草莽の巻』大江の魚)
●典獄(てんごく)
監獄の事務をつかさどる職。
(『三国志(五)孔明の巻』于吉仙人)
●伝国の玉璽(でんこくのぎょくじ)
朝廷の玉璽。
洛陽焼失のあと、建章殿の井戸の中から見つけ、孫堅が手にした。
[印文]
受命于天(めいをてんにうく)
既寿永昌(きじゅえいしょう)
[程普の説]
むかし荊山(けいざん)のもとで、鳳凰(ほうおう)が石に棲むのを見て、時の人が、石の心部を切って、楚(そ)国の文王に献じ、文王は、稀世の璞玉(あらたま)なりと、宝としていました。しかし、後、秦(しん)の始皇(しこう)の二十六年に、良工を選んでみがかせ、方円四寸の玉璽に作りあげ、李斯(りし)に命じて、この八字を彫らせたものであります。二十八年始皇帝が洞庭湖(どうていこ)をお渡りの折、暴風のために、一時この玉璽も、湖底に沈んだことなどもありました。しかし、ふしぎにもこの玉璽を持つ者は、一身つつがなく栄え、玉璽もいつか世に現れて、累世(るいせい)朝廷の奥に伝国の宝として、漢の高祖より今日まで、伝え伝えて参った物ですが。実に奇瑞(きずい)の多い玉璽ではあります。
(『三国志(二)群生の巻』珠)
●天質(てんしつ)
うまれつき。天性。
(『三国志 五丈原の巻』髪を捧ぐ)
●天数(てんすう)
天から与えられた寿命。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●顛倒(てんとう)
平常の落ち着きを失ってうろたえること。
(『三国志(八)図南の巻』漢中併呑)
●諂佞(てんねい)
相手に気に入られるように振る舞うこと。こびること。
(『三国志(三)草莽の巻』健啖天下一)
(『三国志(七)望蜀の巻』蜀人・張松)
●天網恢々(てんもうかいかい)
天が張りめぐらした網は広く、目が粗いようだが、悪人・悪事は決して取り逃がさないということ。
(『三国志 臣道の巻』美童)
●諂諛(てんゆ)
こびへつらうこと。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●天佑(てんゆう)
天のたすけ。
(『三国志 赤壁の巻』長坂橋)
(『三国志 五丈原の巻』高楼弾琴)
(『三国志 五丈原の巻』水火)
と
●都尉(とい)
郡の軍事を司る官。俸禄は比二千石。
(『三国志(三)草莽の巻』両虎競食の計)
●榻(とう)
ながいす、寝台のこと。
(『三国志 桃園の巻』打風乱柳)
(『三国志 臣道の巻』白門楼始末)
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
●童学草舎(どうがくそうしゃ)
村の寺子屋。関羽はそこの先生をしていた。
●東漢(とうかん)
後漢の別称。
(『三国志 出師の巻』改元)
●藤甲(とうこう)
山藤(やまふじ)の蔓(つる)を枯らし、油に浸(ひた)して陽にさらしてを何十回と繰り返して、編んで作った鎧のこと。この鎧は、水を透(とお)さず、非常に軽く、水に浮き、弓も刀も刃が立たないほど強靱である。
(『三国志 出師の巻』藤甲蛮)
●道士(どうし)
仙人。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●東曹掾(とうそうのえん)
三公府の属官で、人事を司る。俸禄は比四百石。
(『三国志 赤壁の巻』臨戦第一課)
●董卓(とうたく)
黄巾賊討伐の際は、広宗で黄巾(こうきん)の総帥(そうすい)張角(ちょうかく)の軍と戦っていた官軍の大将。
(『三国志 桃園の巻』檻車)
・・・
西涼(せいりょう)の刺史(しし)。
(『三国志 桃園の巻』舞刀飛首)
・・・
董卓、字(あざな)は仲穎(ちゅうえい)。隴西臨洮(ろうせいりんとう)の生れ。
身長八尺、腰の太さ十囲。肉脂豊重、眼は細い。
(『三国志 桃園の巻』蛍の彷徨)
・・・
初平三年(西暦192年)壬申(みずのえさる)、四月二十二日の真昼、王允や呂布らの策略により、宮中で殺された。五十四歳だった。
(『三国志 の巻』人間燈)
●撞着(どうちゃく)
前後が矛盾すること。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●鄧茂(とうも)
黄巾賊。大方(だいほう)程遠志(ていえんし)の軍では副将をつとめる。
関羽に斬られる。
●討虜将軍(とうりょしょうぐん)
雑号将軍のひとつ。後漢初の名将王覇が就いた故事がある。
(『三国志 孔明の巻』霹靂車)
●咎(とが)
けしからぬ行為。
(『三国志 臣道の巻』不戦不和)
●鬨(とき)
戦場での叫び声。
●時しも(ときしも)
ちょうどその時。
(『三国志 五丈原の巻』水火)
●涜職(とくしょく)
職をけがすこと。
(『三国志 五丈原の巻』具眼の士)
●得心(とくしん)
納得すること。
(『三国志 草莽の巻』母と妻と友)
(『三国志 図南の巻』成都陥落)
●督戦(とくせん)
部下を監督激励して戦わせること。
(『三国志 図南の巻』鶏肋)
●督郵(とくゆう)
郡吏の一つ。郡太守に属し、領内の県を観察する。
●塗炭(とたん)
泥にまみれ火に焼かれるような苦しい境遇。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●突貫(とっかん)
激しい勢いでつきやぶり向こうへぬけること。
(『三国志 図南の巻』次男曹彰)
●吶喊(とっかん)
突撃に移る前に、士気を高めるために、指揮者の合図に応じて声を大きく張り上げること。
(『三国志 草莽の巻』淯水は紅し)
●篤厚(とっこう)
人情にあつく誠実なこと。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●都亭侯(とていこう)
列侯の一つ。一つの亭を名目的に領有するものを亭侯という。
●駑鈍(どどん)
才が鈍く知恵が足りないこと。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●舎人(とねり)
皇族や貴族に仕え、警備や雑用などに従事していた者。
(『三国志(九)出師の巻』成都鳴動)
●鳶色(とびいろ)
タカ科トビの羽毛の色。つまり、赤暗い茶褐色のこと。
(『三国志 出師の巻』蛮娘の踊り)
●輩(ともがら)
同類の者ども。
(『三国志 五丈原の巻』竈)
●擒人(とりこ)
捕らえられた人のこと。
(『三国志 臣道の巻』不戦不和)
●遁辞(とんじ)
責任などをのがれようとして言う言葉。
(『三国志 出師の巻』孔明を呼ぶ)
●頓首(とんしゅ)
頭を地面にすりつけるように拝礼すること。
(『三国志(八)図南の巻』魏延と黄忠)
●緞子(どんす)
紋織物のひとつの種類。
(『三国志(三)草莽の巻』母と妻と友)
な
●内訌(ないこう)
うちわもめのこと。
(『三国志(四)臣道の巻』一書十万兵)
●就中(なかんずく)
たくさんの選択肢のなかから、特に一つを取り上げるさま。
(『三国志 出師の巻』孔明を呼ぶ)
●生さぬ仲(なさぬなか)
生みの親と子ではない。義理の親子。
●南華老仙(なんかろうせん)
荘子の別称。南華真人ともいう。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●難渋(なんじゅう)
すらすらと進まないこと。
(『三国志』序)
に
●二虎競食の計(にこきょうしょくのけい)
荀彧が曹操に進言した、徐州の劉備と小沛の呂布に対処するための策。
「劉備は、今徐州を領しているものの、まだ正式に、詔勅(しょうちょく)をもってゆるされてはおりません、それを餌えとして、劉備に勅を下し、あわせて、密旨を添えて、呂布を殺せと命じるのです。それが、劉備の手によって完全になされれば、劉備は自分の手で、自分の片腕を断ち切ることになり、万一、失敗して、手を焼けば、呂布は怒って、必ずあの暴勇をふるい、劉備を生かしてはおかないでしょう」
(『三国志(三)草莽の巻』両虎競食の計)
●似気ない(にげない)
ふさわしくない。
(『三国志 五丈原の巻』西部第二戦線)
●にわかに
突然に。
(『三国志(八)図南の巻』成都陥落)
ね
●佞(ねい)
口先がうまい。
(『三国志 出師の巻』鹿と魏太子)
●寧夏(ねいか)
現在の内モンゴル自治区西部に相当する。
(『三国志 望蜀の巻』馬騰と一族)
●佞臣(ねいしん)
主君にこびへつらう家来。
(『三国志 出師の巻』七歩の詩)
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●佞人(ねいじん)
こびへつらう人。
(『三国志 望蜀の巻』蜀人・張松)
(『三国志 五丈原の巻』竈)
●佞智(ねいち)
ずるがしこい知恵。こびへつらうことにたけた知恵。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
(『三国志 望蜀の巻』馬騰と一族)
●佞弁(ねいべん)
心がねじけていて口先の巧みなこと。
(『三国志 図南の巻』漢中併呑)
(『三国志 出師の巻』改元)
●ねめつける
にらみつける
(『三国志 桃園の巻』黄巾賊)
●懇ろ(ねんごろ)
親切で丁寧なさま。
(『三国志 赤壁の巻』殺地の客)
(『三国志 図南の巻』生きて出る柩)
(『三国志 出師の巻』呂蒙と陸遜)
の
●嚢中(のうちゅう)
ふくろのなかのこと。
(『三国志(四)臣道の巻』霧風)
は
●佩(はい)
身につける。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●廃苑(はいえん)
兵を募っている高札を見ていた蓆売りのころの劉備が、張飛に声をかけられ、ふたりで話し合った石橋の先にある遺蹟。
ある学者が池をほって、聖賢の学校を建てたが、時勢は聖賢の道と逆行するばかりで、真面目に通ってくる生徒はなかった。学者は、それでも根気よく、石橋に立って道を説いたが、市の住民や童は、耳もかさず、小賢(こざか)しい奴だと、石を投げる者もあった。学者は、いつのまにか、ほんとの狂人になってしまい、そのうちに蓮池の中に、あわれ死体となって浮び上がった、といわれている。
●沛然(はいぜん)
雨が一時に激しく降るさま。雨が勢いよく降るさま。
(『三国志 草莽の巻』好敵手)
(『三国志 草莽の巻』増長冠)
(『三国志 臣道の巻』霧風)
●枚を喞む(ばいをふくむ)
声を立てず、息を凝らす。
(『三国志 五丈原の巻』木牛流馬)
●覇王(はおう)
楚漢戦争において、高祖劉邦と争い、「西楚の覇王」と称された項羽のこと。
(『三国志 草莽の巻』小覇王)
●拍案(はくあん)
激しい怒り・驚き・称賛などの感情を表す。
(『三国志』序)
●幕下(ばくか)
将軍の異称。
(『三国志 望蜀の巻』西蜀四十一州図)
●莫逆(ばくぎゃく)
意気投合してきわめて親しい間柄。
(『三国志(八)図南の巻』馬超と張飛)
●駁する(ばくする)
他人の意見や考えなどを攻撃して反論を述べる。
(『三国志(八)図南の巻』一股傷折)
●白叟(はくそう)
老人。
(『三国志(五)孔明の巻』徐庶とその母)
●白波(はくは)
後漢末、白波谷に拠った黄巾の残党を指す。のちに転じて盗賊を指す語となった。
(『三国志(三)草莽の巻』緑林の宮)
●白馬陣(はくばじん)
公孫瓚は、先年、蒙古(もうこ)との戦に、白馬一色の騎馬隊を編制して、北の胡族(えびす)を打破ったことがある。それ以来、公孫瓚の「白馬陣」といえば、天下に有名になっていた。
(『三国志(二)群生の巻』白馬将軍)
●白旄(はくぼう)
白いからうしの尾をさおの先につけた旗。指揮官が指揮をするときに用いる。
(『三国志 群生の巻』競う南風)
(『三国志 出師の巻』冬将軍)
●匣(はこ)
木・紙・竹などで作った、物を入れるための器。多くは方形。
(『三国志(八)図南の巻』遼来々)
●薑(はじかみ)
ショウガ科の多年草
(『三国志(八)図南の巻』藤花の冠)
●端なく(はしなく)
何のきっかけもなく事が起こるさま。
(『三国志 出師の巻』孟獲)
●馬氏の五常(ばしのごじょう)
馬氏の五兄弟は、みな字(あざな)に常の字があるのでこう称された。
(『三国志 望蜀の巻』白羽扇)
●鉢の木(はちのき)
能の「鉢木」のこと。北条時頼が寒夜に宿を求めると、主人の佐野源左衛門が秘蔵の鉢木を薪にしてもてなした。大事なものを犠牲にする点で劉安の話に少しだけ近い。
(『三国志 草莽の巻』黒風白雨)
●八門遁甲(はちもんとんこう)
道教経典『秘蔵通玄変化六陰洞微遁甲真経』のことか。招風の術や縮地の法を収め、諸葛亮が習得したと記す。
(『三国志 五丈原の巻』北斗七星旗)
●跋扈(ばっこ)
思うままにのさばること。
(『三国志 赤壁の巻』出廬)
●八荒(はっこう)
八方の果て。全世界のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』両虎競食の計)
●発石車(はっせきしゃ)
投石機の類か。近代の火薬による大砲ではない。霹靂車(へきれきしゃ)ともいう。
(『三国志(五)孔明の巻』霹靂車)
●波濤(はとう)
大きな波。
(『三国志(九)出師の巻』蜀山遠し)
●憚る(はばかる)
他に対して恐れつつしむ。
(『三国志 図南の巻』鶏肋)
●馬武(ばぶ)
後漢の光武帝劉秀を助けた名将。光武帝の功臣「雲台二十八将」に数えられる。
(『三国志 臣道の巻』奇舌学人)
●樊噲(はんかい)
高祖劉邦の功臣。鴻門の会で劉邦を救うなど、多くの武功がある。
(『三国志 草莽の巻』火星と金星)
●半酣(はんかん)
酒席、酒興が最高潮であること。
(『三国志 出師の巻』蜀呉修交)
●反間(はんかん)
敵の内部の仲間割れを図ること。
(『三国志 五丈原の巻』髪を捧ぐ)
●万戸侯(ばんここう)
万戸を領有する列侯。列侯の封邑は、戸を単位とした。後漢において万戸の封邑を持つことは、これ以上ない待遇であった。
●叛骨(はんこつ)
容易に人に与しない気骨。
(『三国志 五丈原の巻』賭)
●叛心(はんしん)
謀反を起こそうとする心のこと。
(『三国志 臣道の巻』小児病患者)
●版図(はんと)
一国の領域。領土。
(『三国志 出師の巻』荊州変貌)
●蟠桃河(ばんとうが)
劉備の家の裏にある桃園の先に流れている。
劉備が母の土産にと買ってきた茶を、母が投げ捨てた河。
ひ
●彼我(ひが)
相手がたと自分の方のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』黒風白雨)
●引具す(ひきぐす)
いっしょに連れていく。
●貔貅(ひきゅう)
中国古代神話上の生物)
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
●匕首(ひしゅ)
短剣。
(『三国志 出師の巻』孔明を呼ぶ)
●稗将軍(ひしょうぐん)
正しくは裨将軍。軍の部隊長。
(『三国志(三)草莽の巻』北客)
●飛箭(ひせん)
飛んでくる矢のこと。
(『三国志 群生の巻』白馬将軍)
●必定(ひつじょう)
そうなるにきまっていること。
(『三国志 出師の巻』梨の木)
●畢生(ひっせい)
一生。
(『三国志 五丈原の巻』木門道)
●逼塞(ひっそく)
落ちぶれて世間から隠れ、みじめな境遇にあること。
(『三国志 出師の巻』改元)
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●費亭侯(ひていこう)
列侯の爵位。祖父曹騰が費亭侯に封ぜられ、それを父曹嵩が嗣いだ。
(『三国志 群生の巻』毒と毒)
●一叢(ひとむら)
ひとかたまりのこと。
(『三国志 臣道の巻』不戦不和)
●脾肉・髀肉(ひにく)
「脾肉(ひにく)を嘆じたところで」とは、久しく馬に跨らなかったため、内腿に贅肉がついたことを嘆いた劉備の故事から、功名を立てる機会に恵まれない境遇を嘆く意味で用いられる。『三国志』先主伝注が出典。
(『三国志 桃園の巻』岳南の佳人)
(『三国志 群生の巻』虎牢関)
●卑鄙(ひひ)
下劣である。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●裨補(ひほ)
助けおぎなうこと。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●微恙(びよう)
軽い病気。
(『三国志 臣道の巻』美童)
●苗裔(びょうえい)
遠い血統の子孫のこと。
(『三国志(三)草莽の巻』黒風白雨)
●驃騎将軍(ひょうきしょうぐん)
大将軍に次ぐ第二位の将軍号。その格式は三公に匹敵する。
(『三国志(二)群生の巻』大権転々)
●病躯(びょうく)
病気にかかっているからだのこと。
(『三国志(三)草莽の巻』陳大夫)
●豹頭環眼(ひょうとうかんがん)
「豹頭環眼 燕頷虎鬚」は、張飛の容貌を表す定型句。豹のような頭でどんぐり眼。燕のように張ったアゴで虎のようなヒゲをいう。
●苗賊(びょうぞく)
伝説の聖王である堯、舜のころに、江南地方に居住していたとされる蛮族。現在の少数民族である苗(ミャオ)族とは異なる。
(『三国志 桃園の巻』黄巾賊)
●閔貢(びんこう)
河南の中部掾史(ちゅうぶえんし)。
崔毅(さいき)の茅屋(あばらや)で保護していた帝と陳留王(ちんりゅうおう)を探し当た。
●愍然(びんぜん)
哀れむべきさま。
(『三国志(七)望蜀の巻』鴻門の会に非ず)
(『三国志 出師の巻』王風万里)
ふ
●賦(ふ)
事実や風景、心に感じたことなどをありのままに述べたもの。
(『三国志(六)赤壁の巻』酔計二花)
●楓林停車(ふうりんていしゃ)
唐の詩人、杜牧の「山行」詩より。
(『三国志(二)群生の巻』秋雨の頃)
●不壊(ふえ)
堅固。こわれないこと。
(『三国志 出師の巻』武祖)
(『三国志 出師の巻』遺孤を託す)
●武王(ぶおう)
周王朝の始祖。殷を滅ぼした。
(『三国志 赤壁の巻』舌戦)
●武王の紂を討ち、越王の呉を仆す(ぶおうのちゅうをうち、えつおうのごをたおす)
殷の紂王(ちゅうおう)を討ち周を建国した武王と、たいへんな苦労の末に呉を滅ぼした越王勾践(こうせん)を指す。
(『三国志 臣道の巻』一書十万兵)
●無興(ぶきょう)
機嫌を損なうこと。
(『三国志 五丈原の巻』八陣展開)
●伏波将軍(ふくはしょうぐん)
雑号将軍であるが格式は高い。後漢初に功臣の馬援が任命されたためである。
(『三国志 草莽の巻』奇計)
●復命(ふくめい)
命令を受けた者が、その経過や結果を報告すること。
(『三国志(六)赤壁の巻』群英の会)
●布告の文(ふこくのぶん)
劉備が蓆(むしろ)売りのころ、城内の辻で目にした、兵を募っている立札。
[文]
遍(あまねく)天下に義勇の士を募(つの)る
黄巾(こうきん)の匪(ひ)、諸州に蜂起してより、年々の害、鬼畜の毒、惨として蒼生(そうせい)に青田(せいでん)なし。
今にして、鬼賊を誅(ちゅう)せずんば、天下知るべきのみ。
太守(たいしゅ)劉焉(りゅうえん)、遂に、子民の泣哭(きゅうこく)に奮って討伐の天鼓を鳴らさんとす。故に、隠れたる草廬(そうろ)の君子、野に潜(ひそむ)の義人、旗下に参ぜよ。
欣然(きんぜん)、各子の武勇に依って、府に迎えん。
涿郡(たくぐん)校尉(こうい)鄒靖(すうせい)
●不才(ふさい)
役に立たないこと。
(『三国志(八)図南の巻』老将の功)
●不日(ふじつ)
近いうちに。
(『三国志(三)草莽の巻』小覇王)
●不肖(ふしょう)
おろかなこと。
(『三国志 臣道の巻』避客牌)
●符水の法(ふすいのほう)
おふだと聖水を用いて病を癒すこと。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●武祖文皇(ぶそぶんのう)
曹操と曹丕のこと。
(『三国志 五丈原の巻』木門道)
●伏犠神農(ふっきしんのう)
伏犠と神農は、ともに上古の聖王。「三皇」に数えられることが多い。
(『三国志 出師の巻』蜀山遠し)
●普天(ふてん)
全世界。
(『三国志 出師の巻』蜀また倣う)
●舷(ふなばた)
ふなべりのこと。
(『三国志(三)草莽の巻』緑林の宮)
●駙馬(ふば)
駙馬都尉のこと。三国時代は、多くの場合、公主(皇帝の娘)を娶ったものが就く。
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
●駙馬都尉(ふばとい)
俸禄は比二千石。三国時代は、皇女の夫のほか、外戚や宗室も就任した。
●撫民(ぶみん)
人民をいたわること。
(『三国志 五丈原の巻』司馬仲達計らる)
●不明(ふめい)
物事を見通す見識がないこと。
(『三国志 五丈原の巻』馬謖を斬る)
●振り仰ぐ(ふりあおぐ)
顔を上へ向けて高い所を見るのこと。
(『三国志 出師の巻』蜀呉修交)
●俘虜(ふりょ)
戦争で敵軍にいけどりにされた者。
(『三国志 図南の巻』一股傷折)
●無聊(ぶりょう)
たいくつ。
(『三国志(六)赤壁の巻』裏の裏)
●文学掾(ぶんがくのえん)
郡国の属吏で、郡国の教育に従事した。
(『三国志(六)赤壁の巻』臨戦第一課)
●刎頸(ふんけい)
首を刎ねること。互いに首を刎ねられても悔いはないほどの強い信頼関係を表す。『史記』に書かれた戦国時代の趙の廉頗(れんぱ)と藺相如(りんしょうじょ)の故事による。
(『三国志 出師の巻』月落つ麦城)
(『三国志 出師の巻』雁のみだれ)
(『三国志 出師の巻』南蛮行)
●文弱(ぶんじゃく)
文事にふけって弱々しいこと。
(『三国志 出師の巻』一書生)
●文醜(ぶんしゅう)
袁紹の旗下(きか)で豪勇第一といわれている。
身丈(みのたけ)七尺をこえ、面(おもて)は蟹(かに)のごとく赤黒い。
(『三国志(二)群生の巻』白馬将軍)
●奮武将軍(ふんぶしょうぐん)
雑号将軍のひとつ。雑号将軍とは、目的に応じてつけられる将軍号である。
(『三国志(二)群生の巻』競う南風)
へ
●睥睨(へいげい)
威圧するように周囲をにらみまわすこと。
(『三国志(七)望蜀の巻』白羽扇)
●平原県(へいげんけん)
青州北西郡の平原郡に属する県。
●屏息(へいそく)
息を殺してじっとしていること。
(『三国志 出師の巻』孟獲)
●兵ハ神速ヲ貴ブ(へいはしんそくをたっとぶ)
『三国志』郭嘉伝を出典とする。軍隊は早さが重要であることを言う。
(『三国志(四)臣道の巻』黄河を渡る)
●碧眼(へきがん)
青い目。
(『三国志(九)出師の巻』草喰わぬ馬)
●霹靂(へきれき)
急に雷が激しく鳴ること。
(『三国志(四)臣道の巻』兇門脱出)
●別部司馬(べつぶしば)
司馬は、将軍府に属する将校の一つ。俸禄は千石。芝の中で、別部隊を率いる者を別部司馬と呼ぶ。
(『三国志 桃園の巻』十常侍)
●弁皇子(べんおうじ)
霊帝の子。母は何后。
●偏私(へんし)
えこひいきをすること。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●貶する(へんする)
地位または身分をさげる。
(『三国志 出師の巻』七歩の詩)
●澠池(べんち)
司隷弘農郡に属する県。洛陽の西に位置する。
●翩翻(へんぼん)
旗などがひるがえるさま。
(『三国志 出師の巻』蛮娘の踊り)
(『三国志 五丈原の巻』洛陽に生色還る)
●沔陽(べんよう)
漢中の西方。
(『三国志(八)図南の巻』漢中王に昇る)
ほ
●鵬(ほう)
想像上の大きな鳥。
(『三国志 群生の巻』白馬将軍)
●茫(ぼう)
光。
(『三国志 五丈原の巻』秋風五丈原)
●鳳眼(ほうがん)
鳳凰眼ともいう。
鳳凰(ほうおう)の眼のように細くてしかも光があるという意味。
王侯となる人相とされる。臥蚕眉とともに関羽の容貌を表す定型句。
●咆哮(ほうこう)
獣が激しい勢いで咆えること。ほえさけぶこと。
(『三国志 草莽の巻』馬盗人)
(『三国志 出師の巻』歩く木獣)
●防寨(ぼうさい)
敵の攻撃や侵入を防ぐために設けられた、とりでや柵(さく)のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』不戦不和)
●放恣(ほうし)
勝手きままで節度がないこと。
(『三国志(四)臣道の巻』雷鼓)
●傍人(ぼうじん)
そばにいる人。
(『三国志 五丈原の巻』銀河の祷り)
●奉車都尉(ほうしゃとい)
皇帝の車駕の管理やその護衛をつかさどる武官。俸禄は比二千石。
(『三国志 草莽の巻』胡弓夫人)
●滂沱(ぼうだ)
涙がとめどなく流れ落ちるさま。
(『三国志 出師の巻』遺孤を託す)
●方天戟(ほうてんげき)
呂布の武器。薙(な)ぐことも突くことも可能であった。
●㟐蕩山(ぼうとうざん)
実在の地名は芒碭山。芒山と碭山の二つを合わせ称する。
(『三国志(三)草莽の巻』奇計)
●歩弓手(ほきゅうしゅ)
漢代には見られない。元などにおいては県属の下級武士。
(『三国志 群星の巻』競う南風)
●卜(ぼく)
うらなうこと。
(『三国志(二)群生の巻』傾国)
(『三国志(四)臣道の巻』太医吉平)
(『三国志(七)望蜀の巻』鴛鴦陣)
●牧(ぼく)
州の長官。俸禄は二千石。従来の監察任務に加え、霊帝期より、行政権を持つ。後漢末の群雄の多くは、州牧となることで地方に割拠することができた。
●卜者(ぼくしゃ)
易者。
(『三国志(五)孔明の巻』立春大吉)
●卜する(ぼくする)
よしあしを判断する。
(『三国志 出師の巻』蜀呉修交)
●朴訥(ぼくとつ)
飾りけがなく無口なこと。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●僕射士孫瑞(ぼくやしそんずい)
吉川は「僕射士の孫瑞」と読むが、正しくは「士孫瑞」が人名である。僕射は尚書僕射。尚書台の次官で、俸禄は六百石。
(『三国志(二)群生の巻』天颷)
●脯(ほじし)
干し肉。
(『三国志(八)図南の巻』神卜)
●歿(ぼつ)
亡くなる。
(『三国志 篇外余録』魏から――晋まで)
●北海(ほっかい)
青州中央部の国。
(『三国志 群生の巻』秋雨の頃)
●歿す(ぼっす)
人が亡くなること。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●屠る(ほふる)
敵を破る。
(『三国志 望蜀の巻』西蜀四十一州図)
●叛意(ほんい)
謀反(むほん)の心
(『三国志 五丈原の巻』松に古今の色無し)
●奔軍(ほんぐん)
敗走の軍。
(『三国志 五丈原の巻』木門道)
●奔馳(ほんち)
かけ走ること。
(『三国志 出師の巻』魚紋)
●奔馬(ほんば)
勢いよく走る馬のこと。
(『三国志 草莽の巻』改元)
●奔命(ほんめい)
忙しくかけ回ること。
(『三国志 出師の巻』雁のみだれ)
ま
●魔魅(まみ)
人を惑わすばけもの。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●満腔(まんこう)
体全部。心から。
(『三国志 図南の巻』短髪壮士)
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●漫罵(まんば)
みだりにののしること。
(『三国志 出師の巻』白帝城)
み
●御位(みくらい)
天子の位のこと。『易経』に基づく。
(『三国志(二)群生の巻』珠)
●妙計(みょうけい)
普通には思いつかないような、巧みなはかりごと。
(『三国志(八)図南の巻』趙子龍)
む
●無二無三(むにむさん)
わきめもふらず、ひたすらな様子。
(『三国志(八)図南の巻』関平)
●夢寐(むび)
ねむって夢を見るあいだ。
(『三国志(八)図南の巻』遼来々)
(『三国志(九)出師の巻』草喰わぬ馬)
め
●名分(めいぶん)
身分に伴って必ず守らなければならない道義上の身のほどのこと。
(『三国志 臣道の巻』鬮)
●螟蛉の子(めいれいのこ)
似我蜂が螟蛉(アオムシ)を取って育てることから、異姓養子をいう。異姓養子は重大な禁忌であった。
(『三国志 出師の巻』月落つ麦城)
●面罵(めんば)
相手を目の前においてののしること。
(『三国志 五丈原の巻』女衣巾幗)
も
●盲亀の浮木(もうきのふぼく)
大海中に住み百年に一度水面に出てくる目の見えない亀が、ようやく浮木に遇 (あ) いその穴に入るという『涅槃経』などにある話から、めったに会えないことをいう。
(『三国志 孔明の巻』古城窟)
●蒙塵(もうじん)
天子が難をさけて都を逃げ出すこと。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●艨艟(もうどう)
いくさの船。軍艦。
(『三国志 出師の巻』呂蒙と陸遜)
(『三国志 出師の巻』建艦総力)
●孟徳新書(もうとくしんしょ)
曹操の『孫子』注(魏武注孫子)は、最も優れた解釈として、今も『孫子』理解の定番である。
(『三国志 望蜀の巻』孟徳新書)
●沐浴(もくよく)
髪・体を洗い清めること。
(『三国志 孔明の巻』于吉仙人)
●髻(もとどり)
髪の毛を頭の上に集めて束ねた部分。
(『三国志 図南の巻』冬葉啾々)
(『三国志 五丈原の巻』髪を捧ぐ)
●細作(ものみ)
敵方の様子をさぐる者。
(『三国志 図南の巻』短髪壮士)
●門地(もんち)
いえがら。
(『三国志 五丈原の巻』髪を捧ぐ)
や
●扼する(やくする)
重要な地点を支配下におくこと。しっかりとつかむこと。
(『三国志 孔明の巻』于吉仙人)
(『三国志 図南の巻』魏延と黄忠)
(『三国志 五丈原の巻』ネジ)
●薬籠中(やくろうちゅう)
薬箱の中にある薬品のように、いつでも必要なときに、自分の役に立ち、自由自在に使える人や物のたとえ。
(『三国志 図南の巻』酒中別人)
●扼腕(やくわん)
自分で自分の腕を強くにぎりしめること。
(『三国志 五丈原の巻』松に古今の色無し)
●矢たけび(やたけび)
戦いの時に発する声。
(『三国志 図南の巻』関平)
●野に遺賢なし(やにいけんなし)
すぐれた人物はすべて官について民間に残っていない。人材が集まって正しい政治が行われていることをいう。
(『三国志 孔明の巻』孫権立つ)
ゆ
●優渥(ゆうあく)
君が臣に対してねんごろに手厚いこと。
(『三国志 五丈原の巻』秋風五丈原)
●雄偉(ゆうい)
たくましくすぐれていること。
(『三国志 図南の巻』短髪壮士)
●遊学(ゆうがく)
よその土地や国に行って学問すること。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●遊興(ゆうきょう)
酒色や宴会に興ずること。
(『三国志 五丈原の巻』竈)
●幽幻(ゆうげん)
上品で優雅なこと。
(『三国志』序)
●有司(ゆうし)
役人。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●雄図(ゆうと)
壮大な計画。
(『三国志 五丈原の巻』具眼の士)
●祐筆(ゆうひつ)
文書・記録の作成をつかさどる文官。
(『三国志 望蜀の巻』渭水を挟んで)
●幽明(ゆうめい)
冥土(めいど)とこの世。
(『三国志 出師の巻』遺孤を託す)
●諭告(ゆこく)
さとし言い聞かせること。
(『三国志 出師の巻』女傑)
●油幕(ゆばく)
雨露をしのぐために桐油を引いた幕。
(『三国志 五丈原の巻』中原を指して)
●由来(ゆらい)
もともと。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
よ
●邀撃(ようげき)
敵を待ち受けて攻撃すること。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●揚言(ようげん)
公然と言うこと。
(『三国志 赤壁の巻』群英の会)
●癰疽(ようそ)
悪性の腫れ物。
(『三国志 五丈原の巻』二次出師表)
●養由(ようゆう)
春秋時代、楚の弓の名人。養由基。百歩離れた柳の葉を射て百発百中であったという。
(『三国志(七)望蜀の巻』黄忠の矢)
●瓔珞(ようらく)
玉や貴金属に紐を通してつないだ飾り。
(『三国志 出師の巻』孟獲)
●余燼(よじん)
燃え残りの火。
(『三国志(八)図南の巻』御林の火)
●余憤(よふん)
収まらずに心の中に残っているいきどおり。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●宜しく(よろしく)
適当に。
(『三国志 出師の巻』出師の表)
ら
●乱箭(らんせん)
入り乱れて飛びかう矢のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』霧風)
●乱麻(らんま)
乱れもつれた麻。また、世の中や物事の乱れもつれたさまにたとえていう。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
り
●裡(り)
内のこと。物の内側の意に用いる。
(『三国志 臣道の巻』美童)
(『三国志 望蜀の巻』降参船)
●吏(り)
役人。
(『三国志 五丈原の巻』具眼の士)
●六韜三略(りくとうさんりゃく)
それぞれ太公望、黄石公の編と伝わる兵書。
(『三国志 孔明の巻』孫権立つ)
●李斯(りし)
秦始皇帝の丞相。法家思想により天下統一に貢献したが、始皇帝の死後、宦官趙高に欺かれ刑死した。
(『三国志 群生の巻』珠)
●李朱氾(りしゅはん)
黄巾賊。小方。劉備が洛陽船で茶を買った夜に泊まった村を襲っている。
●李定(りてい)
魯(ろ)の出身。旅の老人。
山羊をひっぱって、酒に酔うて、時々、市へ行くので、羊仙(ようせん)と呼ばれている。
劉備の家の桑の樹をみて、霊木(れいぼく)といい、この家から必ず貴人が生れるといった。
劉備の家に山羊を置いて立ち去った。
●李牧(りぼく)
戦国時代末期、趙の名将。
(『三国志 望蜀の巻』白羽扇)
●隆運(りゅううん)
勢い盛んな運命。
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●劉焉(りゅうえん)
幽州涿郡(ゆうしゅうたくぐん)の大守。
●劉恢(りゅうかい)
大地主。五台山下の部落の村長(むらおさ)。
劉備が中山府(ちゅうざんふ)安喜県(あんきけん)の尉(い)を辞したあとの面倒をみた。
●劉虞(りゅうぐ)
劉恢の紹介で、劉備の軍を受け入れ、漁陽に起った乱賊を劉備とともに戦った。
●柳絮(りゅうじょ)
綿毛を持ったやなぎの種子。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●劉寵(りゅうちょう)
清廉で有名な後漢末の太守。送別に来た人々から一銭しかもらわなかった「劉寵一銭」という逸話が『蒙求』に載る。
(『三国志 草莽の巻』大江の魚)
●龍頭蛇尾(りゅうとうだび)
頭はりっぱな竜であるのに、尾は貧弱な蛇であるという意味から、転じて、始めは勢いがよいが、終わりはしりすぼみで勢いがなくなってしまうことをたとえていう)
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●亮集(りょうしゅう)
『諸葛氏集』のこと。陳寿が編纂した諸葛亮の文集。
(『三国志 五丈原の巻』木牛流馬)
●劉予州(りゅうよしゅう)
劉備が予州牧であったときの尊称。
(『三国志 孔明の巻』琴を弾く高士)
●良禽は木を選んで棲む(りょうきんはきをえらんですむ)
士は仕えるべき主を選ぶべきことの喩え。『春秋左氏伝』哀公十一年が出典。
(『三国志 桃園の巻』赤兎馬)
(『三国志 草莽の巻』火星と金星)
●燎原の火(りょうげんのひ)
野原に放った火のように、勢いが強くて防ぎ止めようがないこと。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
(『三国志 出師の巻』蜀山遠し)
(『三国志 出師の巻』出師の表)
●諒とする(りょうとする)
もっともだと思って認める。
(『三国志 五丈原の巻』祁山の野)
●梁父吟(りょうほぎん)
諸葛亮の故郷で歌われていた土着の歌謡。諸葛亮の作とも伝わる。
(『三国志 孔明の巻』立つ鳥の声)
●糧秣(りょうまつ)
兵の食料(糧)及び軍馬用のまぐさ(秣)のこと。
(『三国志 草莽の巻』平和主義者)
●緑林(りょくりん)
後漢初、緑林山に拠った群賊らのこと。更始帝政権の中核となった。のちに転じて盗賊をいう)
(『三国志 草莽の巻』緑林の宮)
●呂布(りょふ)
字(あざな)は奉先(ほうせん)。丁原(ていげん)の養子。五原郡(ごげんぐん)の生れ。
弓馬の達者で天下無双といわれている。
●呂望(りょぼう)
太公望(たいこうぼう)のこと。周の創業を支えた宰相。
(『三国志 図南の巻』日輪)
●輪奐(りんかん)
建築物が広大でりっぱなこと。
(『三国志 篇外余録』後蜀三十年)
●綸巾(りんきん)
諸葛亮が用いたことから後に諸葛巾とも称された綸子の頭巾の一種。青色の組紐で作った頭巾。
(『三国志 孔明の巻』立春大吉)
(『三国志 篇外余録』諸葛菜)
●臨淄侯(りんし)
青州に属する県。戦国時代の斉国の首都であった。
(『三国志 出師の巻』七歩の詩)
●林泉(りんせん)
木立や泉水などのある庭園。
(『三国志 篇外余録』魏から――晋まで)
●綸子(りんず)
白絹の紋織物。
(『三国志 孔明の巻』立春大吉)
る
●累卵(るいらん)
積み重ねた卵。不安定で崩れやすいので、物事が非常に危ない状態にあるたとえ。
(『三国志 出師の巻』南方指掌図)
●縷述(るじゅつ)
こまごまと述べること。
(『三国志』序)
れ
●令(れい)
令は県令。一万戸以上の大県の行政官。洛陽令は首都の県令のため、俸禄は千石。
(『三国志(三)草莽の巻』両虎競食の計)
●令旨(れいし)
命令を伝える文書。
(『三国志 出師の巻』武祖)
●霊帝(れいてい)
後漢の代を興した光武帝から、今は二百余年を経、十一代の帝、桓帝(かんてい)を逝(ゆ)いて、十二代の帝位についた霊帝は、まだ十二、三歳の幼少だった。補佐の重臣は、幼帝をあざむき合い、朝綱(ちょうこう)を猥(みだ)りにした。
●歴々(れきれき)
物事が一目で見え、明らかにわかるさま。
(『三国志(四)臣道の巻』小児病患者)
●列侯(れっこう)
漢代の爵位の制度である。「二十等爵」の最上位。名目的に領有する県などの地名を冠して「〇〇侯」と称する。
●聯(れん)
細長い書画の板のこと。
(『三国志(四)臣道の巻』避客牌)
●廉頗(れんぱ)
戦国時代末期、趙の名将。
(『三国志(七)望蜀の巻』白羽扇)
●憐愍(れんびん)
あわれむこと。
(『三国志 出師の巻』私情を斬る)
ろ
●驢(ろ)
ロバ。
(『三国志 桃園の巻』流行る童歌)
●琅玕(ろうかん)
玉の一種。
(『三国志 桃園の巻』黄巾賊)
●弄策(ろうさく)
はかりごとをすること。
(『三国志 五丈原の巻』木門道)
●老僧(ろうそう)
劉備の顔をみて、「塗炭(とたん)の底から大民を救ってくれるお方にちがいない」といった。
黄巾賊によって寺の石室の丸柱に括りつけられた劉備を助けている。
塔の中に匿っていた鴻芙蓉(こうふよう)を劉備に託したのち、塔上の石欄から身を投げた。
●郎中(ろうちゅう)
皇帝の近侍官。俸禄は三百石。後漢の最も一般的な官僚登用制度である郷挙里選の孝廉(こうれん)により採用されると、最初にこの官に就くことが通例であった。
●蝋涙(ろうるい)
ともしたろうそく から溶けて流れた蝋を涙にたとえていう語。
(『三国志(三)草莽の巻』胡弓夫人)
●鹵獲(ろかく)
戦場において勝利を得た部隊が敗れた敵から兵器などを獲得すること。
(『三国志 出師の巻』南蛮行)
(『三国志 五丈原の巻』水火)
●鹵獲品(ろかくひん)
戦場において、商取引なしに入手した物資や兵器のこと。
(『三国志 図南の巻』漢中併呑)
●魯恭王(ろきょうおう)
景帝の皇子。劉備の祖たる中山靖王の兄弟にあたる。
(『三国志 望蜀の巻』蜀人・張松)
●盧植(ろしょく)
中郎将。
楼桑村で隠遁していたときに、劉備少年に、文や兵法を教えていた。
●蘆荻(ろてき)
植物のアシとオギのこと。
(『三国志 図南の巻』金雁橋)
(『三国志 図南の巻』遼来々)
●鹵簿(ろぼ)
皇帝の行列。
(『三国志 桃園の巻』蛍の彷徨い)