白芙蓉(びゃくふよう) 桃園の巻

あらまし

黄巾賊(こうきんぞく)の小隊が、馬元義(ばげんぎ)の姿を見つけ、寺へ向かってきた。

小隊にいた李朱氾(りしゅはん)は、洛陽船(らくようぶね)から茶を買っていた劉備を見つけた。

茶の代わりに、下げていた剣を劉備が差し出すと、馬元義が取り上げた。

李朱氾は「なぜ、俺には茶壷を渡さないのか」と責め立てた。

劉備はやむなく錫(すず)の小壺を李朱氾に渡した。

ひとりの物見が報告した。「十里ほどの先の河べりに、約五百の県の吏軍が野陣を張っている」

馬元義らは、寺で一夜を過ごすことにした。

劉備は門の外に踏み出るが、見張りの兵に捕らえられ、斎堂の丸柱にくくりつけられた。

夜が更けると、ただ一つの高い窓から、縄が下がってきた。その先には短剣が結ばれていた。

劉備が外に出ると、そこに老僧がいた。

老僧は劉備を抱えて、寺の裏の林に向かった。奥には塔が見えた。

老僧は塔の中に入ると、白馬と美しい女性を連れて出てきた。この女性は、県の城長の娘で名を芙蓉(ふよう)、姓は鴻(こう)といった。

老僧は「河べりに陣している県軍の隊まで届けてほしい」と言った。

老僧は塔の上へあがり、劉備が進む方向を指さした。

老僧は、劉備と芙蓉を乗せた白馬が駆けだしていくのを見届けると、歓喜の声をあげ、みずから舌を噛んで、塔の上から身を投げた。

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