北斗七星旗(ほくとしちせいき) 三国志 五丈原の巻

あらすじ

司馬懿は遠くを見ている。
その先には、一両の車に、それを囲む二十八人の黒衣兵。先頭は北斗七星の旗を掲げ、赤装束の騎馬武者がいる。車にいるは諸葛亮だ。

司馬懿は攻撃を命じ、魏軍二千の鉄騎は諸葛亮の軍に襲いかかる。

諸葛亮の軍はうしろに向きを変え、ゆっくりと逃げる。

魏軍は三十里追うが、追いつかない。

不思議に思い、追うのを止めた。

そうすると諸葛亮の軍はふたたび魏軍に向かって進んでくる。

つぎこそはと、魏軍は諸葛亮の軍に襲いかかる。

すると諸葛亮の軍はうしろに向きを変え、ゆっくりと逃げる。

魏軍は二十里追いかけたが、やはり追いつかない。

魏軍はこの奇怪さを恐れてしまい、追うのを止める。

そこにうしろから馬を飛ばしてきた司馬懿は味方の兵から状況を聞き、「追うな。陣地へ退け」と命じる。

そのとき、西方の山から諸葛亮の軍が現れた。

司馬懿は先頭に立って、諸葛亮の軍を追うが追いつかない。

司馬懿は引き返すと、一方の山の尾根から諸葛亮の軍が押しすすめて来た。

司馬懿は退却の命を出す。

魏軍は逃げ走るが、その先に諸葛亮の軍がいる。

「どうして四方に諸葛亮がいるのか」と魏兵は恐れながら、夜どおし逃げ走り、上邽(じょうけい)の城へ戻る。

あとでわかったことだが、この間に蜀軍は麦を刈り取り、鹵城(ろじょう)に運んでいた。

司馬懿は上邽の城に籠り、固く守りに徹していたが、鹵城を守る蜀兵が少ないことを知り、鹵城攻めにでる。

鹵城の外は、一面麦畑である。

深夜、魏軍は鹵城を攻める。

麦畑から隠れていた蜀兵が現れ、魏軍に襲いかかる。

魏軍は敗れ、司馬懿は上邽の城へ戻り、固く守る。

魏軍に動きがないことを不審に思った諸葛亮は、姜維と魏延を剣閣へ向かわせる。
蜀が剣閣を失うと、帰路を断たれ、運輸の連絡がとれなくなるためである。

それから後のこと、長史楊儀(ようぎ)が諸葛亮に報告した。
漢中を立つ際、軍を二つに分けて百日交替で休ませると宣言したが、その百日がきたので、前線の兵と交代するため漢中の兵は出発したと。

諸葛亮はただちに前線の兵を漢中へ帰すよう指示する。

それを聞いた前線の兵は喜び、帰る支度を始める。

そこへ剣閣から早馬が来る。
魏軍が剣閣へ猛攻してきており、ここ鹵城にも魏軍が総攻撃にくるというのだ。

楊儀は、この状況では交替のために兵を帰すなどあり得ないと反対する。
しかし諸葛亮は信義を失うことはできないと、漢中に帰すよう命じる。

このことを聞いた蜀の兵たちは、諸葛亮を置いて漢中に帰れないと、諸葛亮の恩に涙を流した。

魏軍が鹵城を攻めてきたが、蜀軍は反撃し、魏軍を遠くへ退ける。

メモ

●八門遁甲(はちもんとんこう)
道教経典『秘蔵通玄変化六陰洞微遁甲真経』のことか。招風の術や縮地の法を収め、諸葛亮が習得したと記す。

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