骨を削る(ほねをけずる) 出師の巻

内容

大将于禁(うきん)・副将龐徳(ほうとく)とする魏(ぎ)軍を破った関羽(かんう)は、樊城(はんじょう)攻略も時間の問題であった。

しかし関羽は戦に出られる状態ではない。人前では隠していたが、夜になると龐徳が放った矢傷の痛みが熱を発するようで、苦しむ声が漏れていた。

関平(かんぺい)と王甫(おうほ)は諸方へ人を派して名医を捜させると、江岸監視隊の一将が華陀(かだ)という医者を連れて来た。

関羽は馬良(ばりょう)と碁を打ちながら、矢傷のあるひじを華陀に見せる。

華陀は嘆息をもらした。毒薬が鏃(やじり)に塗ってあり、骨髄にまで達しているというのだ。

二つの鉄の環(かん)を取り出した華陀は、ひとつの環を柱に打ち、ひとつの環に関羽の腕を入れて縄で縛ろうとした。

「どうするのか」関羽は問う。

「この手術では、いかに将軍でも必ず暴れ苦しむに違いありませんので、動かぬようにいたします」華陀は答える。

関羽は鉄環から腕を抜き、「すぐにはじめてくれ」と言う。

華陀は傷を切開し、鋭利な刃物で骨をガリガリと削る。

関羽は碁盤から眼を離さないが、まわりにいた関平や侍臣は真っ青になり、立ち去る者もいた。

この手術が終わるころには、華陀の額にもあぶら汗が浮いていた。

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