序(じょ)

■ あらまし

三国志は、今から約千八百年前の古典である。

三国志には、詩がある。三国志から詩を除くと、世界的といわれる大構想の価値も無味乾燥なものになろう。

私(吉川英治)は、簡訳や抄略をあえてしなかった。劉備(りゅうび)・曹操(そうそう)・関羽(かんう)・張飛(ちょうひ)そのほかの主要人物などには、自分の解釈や創意をも加えて書いた。

(ここで扱っている)三国志は、正史ではない。けれど、後漢(ごかん)の第十二代霊帝(れいてい)の代(西暦百六十八年頃)から、武帝(ぶてい)が呉を亡ぼす太康元年(たいこうがんねん)までのおよそ百十二年間の治乱が書かれている。構想の雄大さと、舞台の地域の広さは、世界の古典小説の中でも類を見ないものといわれている。

原本は「通俗三国志」「三国志演義」その他数種あるが、そのいずれの直訳にもよらないで、わたくし流に書いたものである。

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