恋の曹操(こいのそうそう) 臣道の巻

内容

徐州(じょしゅう)には、劉備の配下簡雍(かんよう)と糜竺(びじく)が守っていたが、曹操軍が迫ると城を捨ててどこかへ逃げてしまった。
陳珪(ちんけい)、陳登(ちんとう)父子は城門を開き、曹操軍を迎え入れた。

曹操は陳登(ちんとう)に下邳(かひ)の内情を尋ねた。
「下邳(かひ)の城は関羽が守っており、劉備の二夫人と家族がいます」
曹操は荀彧(じゅんいく)に下邳(かひ)を攻略する策を尋ねた。
「関羽を城外へおびき出す必要があります。わざと負けてみせ、敵に追わせるのです。そして道を遮断すればよいのです」
曹操は言った。「関羽を配下に加えたいので、けがなく生け捕りにせよ」
諸将は互いの顔を見合わせているなか、張遼(ちょうりょう)が「関羽を説得しましょう」と言った。
曹操は張遼(ちょうりょう)に任せた。

夜になり、曹操軍に降伏した徐州の兵二百に計画を伝えて放ち、関羽が守る下邳(かひ)の城へ走らせた。
関羽は門を開き、逃げて来た味方の兵を内に入れた。
兵たちは言った。「曹操軍は徐州(じょしゅう)を落とし、そこに留まっています。われらを追うのは夏侯惇(かこうじゅん)と夏侯淵(かこうえん)の部隊だけです」
関羽は城門を開き、戦場へ出て行った。

関羽と夏侯惇(かこうじゅん)はぶつかった。
夏侯惇(かこうじゅん)は逃げてはののしりを繰り返し、関羽は兵三千を率いて追いかけた。
その結果、関羽は曹操軍に囲まれてしまった。
関羽は低い小山に逃げた。

麓のほうから曹操配下の張遼(ちょうりょう)が登ってきた。
張遼(ちょうりょう)は関羽に言った。「命を落とせば、三つの罪を犯すことになる。第一に劉備殿がまだ生きていたらどうする。第二に劉備殿のご家族を託されながら、最後まで守ろうとしていない。第三に天下はまだ定まってはいないのに、命を落とすことは忠節とはいえない」
関羽は頭をたれたまま動かなかった。
関羽は三つの条件を言った。「第一に曹操ではなく漢帝に降伏する。第二にご家族の生命と安全を確約すること。第三に劉皇叔(劉備)の行方がわかればすぐに駆けつける」
張遼(ちょうりょう)は山を駆け下りた。

曹操は張遼(ちょうりょう)から関羽の三条件を聞いた。「ひとつだけ、劉備の行方がわかりしだいすぐに立ち去るというのは困る」
張遼(ちょうりょう)は言った。「劉備以上に目をかければ関羽も丞相(曹操)の恩義に服するようになりましょう」
曹操は関羽を迎えてこいと命じた。

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