黄巾賊(こうきんぞく) 桃園の巻

あらまし

後漢(ごかん)の建寧(けんねい)元年の頃、涼秋の八月、劉備(りゅうび)は洛陽船(らくようぶね)が来るのを待っていた。

この頃の劉備は二十四、五歳で、蓆(むしろ)を織り、簾(すだれ)をつくり、それを売って、生活していた。
洛陽船(らくようぶね)が来るのを待っていたのは、茶を買うためであり、茶は高価なものであったが、母の大好物であった。

劉備は茶の入った錫(すず)の小さい壺(つぼ)を手にした。

持っているすべての銀や砂金だけでは足りず、劉備は剣の緒についている琅玕(ろうかん)の珠を、商人に渡して茶を購入した。

夜半ごろ、劉備の泊まる宿の街を、黄巾賊(こうきんぞく)が襲った。

劉備は宿の裏口から逃げた。

外では、黄色の巾(きれ)で髪を結んだ者が、矛(ほこ)や槍(やり)や鉄杖(てつじょう)を振り回して、暴れていた。

劉備は、闇夜を駆け続け、村を離れ、山道まで出た。

劉備は、黄巾賊の馬元義に捕らえられた。

劉備が捕らえられたのは、樹木の陰にあった古い孔子廟(こうしびょう)に、劉備はぬかずき「わしは武を以て、民を救おう」と言い放ち、廟のなかで休んでいた黄巾賊の者が目を覚ましたためである。劉備は荷物運びとして、黄巾賊の者と北へ進んだ。

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