鴻門の会に非ず(こうもんのかいにあらず) 望蜀の巻

内容

建安(けんあん)十六年冬十二月。劉備(りゅうび)は蜀(しょく)の国境へ入ると、孟達(もうたつ)が四千騎を率いて出迎えていた。

大守(たいしゅ)劉璋(りゅうしょう)は、成都(せいと)をでて涪城(ふじょう)まで出迎えるため準備をしていた。
そこに黄権(こうけん)があらわれ、劉備を迎えることに反対した。
黄権は劉璋の袂を噛んで離さないようにしたが、劉璋に振り払われ、前歯の二本がへし折れた。

劉璋は車に乗り、出発した。
楡橋門(ゆきょうもん)へかかると、、楡橋門の上から、王累(おうるい)が宙にぶら下がっていた。
「わが君、お待ちください」王累は言って、諫言(かんげん)の文を読みだした。
劉璋は王累を一喝した。
王累は自らの身をもって車を止めるため、縄を切って車の前に頭から落ちた。

劉璋は、涪城城内で劉備と対面をした。
両者の会見は、非常に和やかなものであった。

年が明けた建安十七年正月。こんどは劉備が劉璋を招待した。
その宴会は、盛大なものとなった。
宴もたけなわに入ったころ、劉備配下の魏延(ぎえん)が宴の中ほどへ進み出て、長剣を抜いて舞いだした。
蜀の従事官張任(ちょうじん)も剣を抜いて舞い始めた。
魏延の足が劉璋へ近づけば、張任の剣は劉備へと向い、魏延を牽制した。
劉備配下の龐統(ほうとう)が目くばせをすると、劉封が剣を抜き、ふたりの間に入った。
それを見た蜀の幕将たちも剣を抜き、舞い始めた。
「無礼なり、魏延、劉封、ここは鴻門(こうもん)の会ではない。退がれっ」劉備は剣を抜いて一喝した。、
家臣の非礼を劉璋も叱った。
劉璋の劉備に対する信頼は深まった。

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