桑の家(くわのいえ) 桃園の巻

あらまし

劉備はわが家に帰り、母に錫(すず)の小さい茶壺を渡した。

劉備の家は、涿県楼桑村(たくけんろうそうそん)の桑の木の下にあった。

次の日の朝、母は家の裏にある桃園にむしろを敷き、水を汲みに出た子の帰りを待った。

劉備は戻り、茶の準備を始めた。

母は、劉備の下げている剣に目が留まった。

黄巾賊に囲まれたいた劉備を、張飛は助けた。そのお礼として、劉備は自身の剣を渡した。劉備が手ぶらになるからと、張飛は自身が下げていた剣を渡した。劉備が下げている剣は、張飛が下げていた剣であった。(→ 張飛卒 桃園の巻)

母は眼の前にあった錫(すず)の小さい茶壺を手に取り、劉備の手をつかんで蟠桃河(ばんとうが)の岸まで引っ張り、錫の茶壺を河に目がけて投げ捨てた。

その時、劉備の母は「お前には、漢の中山靖王(ちゅうざんせいおう)劉勝(りゅうしょう)の血が流れている。あの剣はその証なのです。その心がなくなってしまったのか」と嘆いた。劉備は改心したが、その後の生活は、いままでと変わらなかった。

三、四年の月日が流れた春のある日、旅の老人が劉備の家に入り、山羊を置いて立ち去った。

老人が山羊を置いて立ち去ったのは、劉備の次の誕生日の祝いだからであり「桑の葉が青々とつく頃に、いい友達が訪ねてくるよ」と言った。(→ 三花一瓶 桃園の巻

関連記事

次の章「橋畔風談(きょうはんふうだん)」へ進む

前の章「張飛卒(ちょうひそつ)」へ進む

トップページへ進む