松に古今の色無し(まつにここんのいろなし) 三国志 五丈原の巻

あらすじ

霊車をひいた蜀軍は成都へ帰っていく。
前方の山中に煙がみえる。
蜀の楊儀(ようぎ)と姜維(きょうい)は物見を放つ。
帰ってきた物見は言う。
魏延が道を焼き払って、阻んでると。
蜀軍は迂回して蜀の魏延がふさいでいる南谷のうしろへ出る

成都には魏延と楊儀から上奏文が届く。
魏延からは、楊儀・姜維が兵権を奪い、乱を企てているため、彼らを討つとある。
しかし楊儀からは、まったく反対の実状が書かれている。
蜀帝劉禅(りゅうぜん)は判断に迷う。
蒋琬(しょうえん)は言う。
諸葛亮は死後のことも考え、何か策を残しておられるはず。つぎの知らせを待ちましょうと。

魏延は数千の兵を率いて、成都へ帰る蜀軍が来るのを待っている。
そこに魏延のうしろから楊儀・姜維が率いる蜀軍が攻めてきた。
魏延の軍は大敗する。

魏延は兵備をあらためて、南鄭(なんてい)へ向かう。

楊儀・姜維が率いる蜀軍は、南鄭城(なんていじょう)に入り、殿軍(しんがり)が着くのを待っている。
そこに知らせが入る。
魏延が南鄭城に向かっている。そこには馬岱もいると。
楊儀は諸葛亮が臨終の折に授けられた錦の袋を取り出す。

南鄭城の閉じていた門を開け放ち、姜維は兵二千を率いて城外へ出る。
そして魏延と対峙する。
魏延は楊儀を出せと言う。
楊儀は後陣の中から馬を進めてくる。
楊儀は言う。
誰が俺を殺し得んやと、三度叫んだら、漢中を魏延に差し上げようと。
魏延は馬上に反り返り、三度叫ぶ。
すると、「ここにいるのを知らぬか」と魏延のすぐ後ろから白刃がおりる。
魏延の首が飛ぶ。
白刃をおろしたのは馬岱である。
馬岱は諸葛亮の生前に、秘策を受けていたのである。

諸葛亮の霊車は、成都に着く。
四川(しせん)の奥地はすでに冬である。
諸葛亮のなきがらは漢中の定軍山(ていぐんざん)に葬られた。
諡(おくりな)は忠武侯(ちゅうぶこう)。

メモ

●駕す(がす)
牛、馬などに車を引かせる。

●扼腕(やくわん)
自分で自分の腕を強くにぎりしめること。

●隘路(あいろ)
通路として狭く、進行の難所。

●上表(じょうひょう)
君主に文書を奉ること。

●薨(こう)
身分の高い人が亡くなること。

●叛意(ほんい)
謀反(むほん)の心

●千載(せんざい)
一千年。

●諡(おくりな)
死後にその人の徳や功績をたたえて贈られる称号。

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