梨の木(なしのき) 三国志(九)出師の巻

・華陀、曹操の怒りを買う

あらすじ

今年六十五歳となる曹操は、体の不調を訴えることが多くなった。
ある日、側近たちが曹操に、べつに新殿を建てて気をかえてはどうかとすすめた。
建築にあたっては、蘇越(そえつ)という建築の名工が呼ばれた。

蘇越の設計図には、中心に九間の大殿がある。
曹操は蘇越を呼んで、「どこからそんなに大きな材木を探してくるのか」と問うた。
蘇越は答えた。「洛陽から三十里、躍龍潭(やくりょうたん)の淵(ふち)に、高さ十余丈の梨の木があり、千古の神木です。これを伐(き)って棟梁(はり)とするは如何でしょうか」
曹操は直ちに大勢の人を派遣した。

ところがその神木の幹は、鋸(のこぎり)の刃も斧も受けつけないという。
曹操は、数百騎の供をつれ、躍龍潭へ向かった。
曹操は、剣を抜き、神木の幹へ刃を入れ、「もう心配ないから恐れずに伐れ」と命じて、洛陽へ帰っていった。
洛陽に戻ったころには、気分が悪いと言って、曹操は寝込んでしまった。

華歆は、天下の名医華陀(かだ)を洛陽へ招きよせた。
華陀は曹操を診断し、非常に難しい手術が必要だと告げた。頭を切り開いて、病根を切り除くというのだ。
関羽のひじも手術して治したという。
それを知った曹操は、華陀は関羽と親しかったため、殺すつもりであろうと言い出し、華陀を獄へ入れてしまった。

メモ

●必定(ひつじょう)
そうなるにきまっていること。

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