雷鼓(らいこ) 臣道の巻

内容

建安(けんあん)四年八月。酒宴が開かれた。
禰衡(ねいこう)は鼓を打ち、禰衡(ねいこう)の音に諸大将は聞きほれた。
しかし舞曲が終わると、汚れた衣服をまとっている禰衡(ねいこう)の無礼さをしかった。
禰衡(ねいこう)は真っ裸になって赤いふんどしひつとつになって、鼓を打った。
「無礼者」曹操は一喝した。
禰衡(ねいこう)と曹操は、互いにののしりあった。
諸大将が剣に手をかけ、立ち上がろうとしている。
曹操は諸大将を制止し、禰衡(ねいこう)に衣服を与えた。
「荊州(けいしゅう)へ行き、わしの使いをせよ」曹操は命じた。
禰衡(ねいこう)は横に首を振るが、曹操は許さなかった。
諸大将は禰衡(ねいこう)を囲んで、したたかに酒を飲ませた。
馬を引き寄せて、禰衡(ねいこう)を馬の上に押し上げた。
馬に乗せられた禰衡(ねいこう)は、馬が歩くがままに東華門(とうかもん)を出た。

禰衡(ねいこう)は荊州の府に着いた。
劉表(りゅうひょう)は禰衡(ねいこう)に会うことは会ったが、心のうちでは(うるさい奴が来た)という顔つきをしていた。

江夏(こうか)には劉表(りゅうひょう)配下の黄祖(こうそ)が守っている。
禰衡(ねいこう)と黄祖(こうそ)とは、以前、交際があったので、「黄祖(こうそ)が会いたがっている」と言って、劉表(りゅうひょう)は禰衡(ねいこう)を江夏(こうか)へ追い払った。
ある者が「なぜ禰衡(ねいこう)を江夏(こうか)へ追い払ったのか」と問うた。
劉表(りゅひょう)は答えた。「曹操は劉表(りゅうひょう)に禰衡(ねいこう)を斬らせるために使者としてよこしたのであろう。もしそうしたら曹操は天下に向かって劉表(りゅうひょう)を笑いものにするにきまっている」

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