凛々細腰の剣(りんりんさいようのけん) 望蜀の巻

内容

呉(ご)から脱出した劉備(りゅうび)と夫人は柴桑(さいそう)へ向かっていた。

この先の要所には、徐盛(じょせい)と丁奉(ていほう)が道をふさいでいるという。
趙雲(ちょううん)は諸葛亮(しょかつりょう)からの嚢(ふくろ)を開き、劉備の耳にささやいた。
「劉備はここで自害せねばならぬ。妻よ。呉へ戻られよ」劉備は夫人へ言った。
「戻らない」夫人は言った。

そこへ徐盛と丁奉が部下を率いて殺到した。
夫人は劉備を車のうしろに隠し、地上へ跳び降りると、徐盛と丁奉は地へひざまずいた。
夫人は、徐盛と丁奉が主人の車に迫るといった無礼さを、叱り飛ばした。
徐盛と丁奉は恐れて、ひれ伏してしまった。
劉備らは、徐盛と丁奉の眼の前を駆け通った。

その後、孫権の命で劉備を追ってきた陳武(ちんぶ)と潘璋(はんしょう)は、徐盛と丁奉を見つけて事情を聞いた。
「妹君など怖れん。こちらは呉侯の直命をうけている」陳武と潘璋は言い、徐盛と丁奉を連れて劉備を追いかけた。

「何ですっ、その無礼な態(ざま)は。馬を降りなさい!」
夫人の一声で、追ってきた四将は思わず馬から飛び降りた。
夫人が四将を叱りとがめているあいだに、劉備は先に進んでいった。
劉備を追っていた四将は夫人の車を見送った。

その後、劉備を追ってきた蒋欽(しょうきん)と周泰(しゅうたい)が四将を見つけて事情を聞いた。
「主君孫権は我らに剣をおあずけになった」蒋欽と周泰は言い、劉備を追いかけた。

劉郎浦(りゅうろうほ)とよぶ一漁村に、たどり着いた劉備らは船を捜したが、ひとつもない。
銅鑼(どら)の音が聞こえ、追手の大軍がやってきた。
劉備は覚悟した。
そのとき、二十余艘の快足舟(はやぶね)があらわれ、その船には諸葛亮(しょかつりょう)がいた。

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