呂蒙と陸遜(りょもうとりくそん) 三国志(九)出師の巻

・呉軍、荊州を攻める

あらすじ

陸口の守りは、呂蒙に代わって、陸遜(りくそん)が赴任した。
当時の陸遜は、呂蒙より十幾歳も年下であり、無名であった。
陸遜は、礼物に書簡をのせて、関羽へ使いを立て、新任の挨拶を送った。
関羽は、これで陸口に対する荊州の守りは楽になったと笑った。

陸遜に代わってから、陸口の守りがゆるくなっていた。
その様子を見ていた関羽は、ひじの矢傷が癒えてきたこともあり、陸口方面の兵力を不落樊城(はんじょう)へ動かした。

陸遜はこのときを待っていた。
陸遜からの報告を受けた孫権は、呂蒙を呼んで、荊州攻めを命じた。

商人に扮した者が、十艘の偽装商船に乗りこみ、商品を上に積んで、先に江をのぼって行った。
偽装商船は、闇の中、潯陽江(じんようこう)の北岸へ着いた。
すぐに荊州の番兵に見つかり、偽商人は捕まったが、酒や珍味を献上したところ、夜明けすぐに船を移動することで、許しを得た。
偽商人は、番兵みなに酒をふるまい、かくし芸をして、楽しませた。
そのあいだに、別働隊は山の裏から這い上がり、烽火台を占領していた。
夜が明けると、昨夜の偽装商船だけでなく、八十余艘の軍船も江上にあり、荊州の番兵はみな生捕られていた。

上陸した呂蒙は、捕虜たちに「次の烽火台を守っている番将を説き伏せて功をあげたら、取り立ててやる」と言った。
この策は次々に功を奏し、呂蒙率いる呉軍は、荊州へ迫った。
呂蒙は降人の中から一隊を編成し、荊州城へ向かわせた。
降人は「門を開けろ。一大事がある」とわめいたため、城中の者が味方と判断し、門を開けると、呉軍は荊州城の中へなだれ込んだ。

メモ

●嘱目(しょくもく)
注目。

●聴許(ちょうきょ)
ききいれること。

●艨艟(もうどう)
いくさの船。

●懇ろ(ねんごろ)
親身なさま。

関連記事

次の章「笠(かさ)」へ進む

前の章「建業会議(けんぎょうかいぎ)」へ進む

トップページへ進む