成都鳴動(せいとめいどう) 三国志(九)出師の巻

・劉備、関羽の死を知る

あらすじ

朝、いつもより早く軍師府へ姿を見せていた諸葛亮は、警備をしていた者から、昨夜、劉備が前殿の廊で倒れていたことを聞き、急いで内殿へ向かった。
劉備は、義弟のうらみを晴らしてくれという関羽の夢を二度見たという。
諸葛亮は疲れによる幻想ですと言って、すぐに退いた。

その途中、彼方から太傅(たいふ)の許靖(きょせい)が、諸葛亮に向かって走ってくるのが見えた。
許靖は、関羽は荊州を奪われ、麦城へ落ちのびたと知らせを伝えにきたのだ。
振り向くと、廊の角に劉備が立っており、二人の話を聞いていた。

その日の午(ひる)過ぎには、関羽の幕下廖化(りょうか)が、ぼろぼろな姿で劉備の前に現れた。
廖化は、上庸(じょうよう)を守る劉封(りゅうほう)と孟達が、関羽の援兵を断ったというのだ。
劉備は怒りに震えた。
そして閬中(ろうちゅう)を守る張飛に、戻るようにと早馬を出した。

早馬が成都に来た。それは、関羽が首を打たれたという知らせであった。
劉備は慟哭のあまり、それから三日のあいだ、寝込んでしまった。
しかし諸葛亮だけは、帳内に入ることを願い求め、早馬が知らせる情報を劉備に伝えていた。
劉備は出陣し、呉を討ち、関羽の仇をうつという。
しかし諸葛亮はそれを諫め、いまは静観し、呉と魏のあいだに争いが発したときに、蜀は起つべきと主張した。

この日、漢中王の名をもって、蜀中に喪(も)は発せられた。

メモ

●燭(しょく)
照明用にともす火。

●舎人(とねり)
皇族や貴族に仕え、警備や雑用などに従事していた者。

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