燈花占(とうかせん) 臣道の巻

内容

曹操は印を作り、張遼(ちょうりょう)に関羽へ届けるよう命じた。
関羽は寿亭侯之印(じゅていこうのいん)とある印文を見て、張遼に返した。

曹操は張遼からの報告を聞き、考え込んだあとに言った。
「印文を見ないで返したか、印文を見てから返したか」
「印の五文字をじっと見ておりました」張遼は答えた。

曹操は作り直させた印を張遼に持たせて、ふたたび関羽へ届けるよう命じた。
関羽は漢寿亭侯之印(かんのじゅていこうのいん)とある印文を見て、受け取った。

「顔良(がんりょう)の弟文醜(ぶんしゅう)が黄河を渡って、延津(えんしん)まで攻めてきました」曹操のもとに早馬が来た。
曹操は軍を率いて向かった。
途中で、曹操は兵糧や兵器を積む車隊を先へ進め、戦闘部隊を後ろにまわして進んだ。

曹操軍が延津(えんしん)に近づくと、先頭を行く、戦闘部隊のいない、兵糧や兵器を積む車隊は文醜の軍に襲われた。兵糧も兵器も置き去りにし、曹操の兵は四方へ逃げた。
曹操は、戦闘部隊の一隊には北へ迂回して敵の退路を断て、別の一隊には南の台地を登れと命じた。

日没となり、文醜は、曹操軍が置き去りにした兵糧や兵器をこちらに運ぶよう命じた。

日が暮れた。曹操はのろしをあげた。
文醜の軍に襲われ逃げていた曹操の兵は、河に林に台地に身を隠していてのだが、のろしを合図に、姿を現した。
曹操軍の張遼と徐晃(じょこう)が文醜を追った。

文醜は振り向きざまに馬上から鉄の半弓で太矢を放った。
太矢は張遼の顔に迫ったが、間一髪で首を下げ、避けた。
張遼が文醜のうしろに迫ろうとした瞬間、二の矢が放たれ、張遼の顔に矢が突き刺さって馬から落ちた。
文醜は張遼の首を獲るため、引き返してきた。
徐晃があいだに入って張遼をうしろへ逃がし、大まさかりを振りかぶって、文醜とぶつかった。
大剣と大まさかりが重なり、三十回ほど火花を飛ばしたのち、文醜は黄河の方へ逃げた。

彼方から、漢寿亭侯雲長関羽と書かれた白い旗を背にさした関羽が向かって来た。
関羽と文醜はぶつかった。
青龍刀と大剣は数十回と刃を合わせたのち、文醜は逃げ出した。
追う関羽に、振り向きざま文醜は矢を放った。
関羽は矢を払い落とし、うしろから文醜の首の根を斬った。

この機に曹操は総攻撃を号令し、文醜の軍は大敗した。

劉備は、逃げ崩れる文醜の兵から「ひげの長い赤面が文将軍を斬った」と聞いた。

夜明けとともに、劉備は前線の近くまで馬を進めた。
対岸に、敵兵を追う大将が見えた。
大将が背にさす小旗には「漢寿亭侯雲長関羽」と書いてある。
そのとき、曹操軍が後方の湖を渡って来るとの知らせに、劉備は退却し、官渡の地へ引き揚げた。

袁紹は劉備を呼び、斬れと命じた。
劉備は無実である理由を並べて訴え、袁紹は納得した。
「私がここにいることを関羽に知らせれば、すぐにここへ来るでしょう」劉備は言った。

劉備は陣所へ戻り、その夜、関羽宛に筆をとった。

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