第七巻 望蜀の巻 第一九〇回 進軍
あらすじ
蜀の劉璋は狼狽する。張松から「曹操野心あり」と報告を受けたからだ。
張松は勧める。荊州の劉備に頼ることと、その使いには孟達と法正が適任だと。
この時、黄権と王累が反対する。
「蜀が劉備に乗っ取られる」
劉璋は考える。張松は実際に諸州を見て来た者。一方、黄権と王累は国外の実情にうとい。また劉備は血縁であり、曹操が一目置く人物。
その結果、劉璋は張松の勧めを受け入れる。
使者法正は荊州の劉備を訪ね、劉璋の書簡を手渡す。
その日の夜、劉備はひとりで考え込んでいた。
龐統が劉備に声をかける。
「何をご心配されておられるのですか」
劉備は答える。
「劉璋は同族であり、その者をあざむいて蜀を獲ることは仁義に反するのだ」
龐統は劉備に説明する。
「日頃の礼法を行っていたら、少しも歩けません。あなたのお言葉はもっともだが、乱れた世を鎮め、民の安息を守るのがあなたの責務です。蜀の状態はそれに当たります。同族の縁を気にされておられますが、そのような小義にとらわれているならば、あなたは責務を放棄していると言えます」
劉備は決意する。
「張松たちが予を迎えようとするのも、天意というものであろう」
蜀の使者法正を客館まで送り届けた諸葛亮が戻り、劉備・龐統・諸葛亮は軍議にふける。
あくる日、法正に入蜀することを伝える。
蜀への遠征軍は五万、中軍に劉備・関平・劉封、相談役に龐統、先鋒と後備に黄忠・魏延とした。
荊州には諸葛亮が残り、襄陽の境に関羽、江陵の城に趙雲、江辺四郡に張飛を置き、守備を固める。