西蜀四十一州図(せいしょくよんじゅういちしゅうず)

第七巻 望蜀の巻 第一八九回 西蜀四十一州図

あらすじ

覇者は己を凌ぐ者を嫌うという。

曹操は怒気を含んで張松に問う。
「もし曹操がこの軍をもって西蜀を攻めたときはどうするのか」
張松ちょうしょうは答える。
「聞くところによると、魏の丞相じょうしょう曹操は、むかし濮陽ぼくようで呂布りょふにもてあそばれ、宛城えんじょうで張繍ちょうしゅうと戦って敗走し、赤壁で周瑜しゅうゆを恐れ、華容かようで関羽に泣訴し、渭水いすい・潼関どうかんの合戦では、髯ひげを切り、戦袍ひたたれを捨て、逃げ逃れたと。その丞相が指揮する兵ですから、これを退けるのになんの手間暇が要りましょうや」
曹操は激怒し、「首を斬れ」と命じる。
楊修ようしゅうが、そして荀彧じゅんいくまでが曹操を諫めたため、曹操は「百棒を加えて場外へ叩き出せ」と命じる。

張松は手ぶらで本国へ帰るわけにはいかない。腫れあがった顔の手当てを受けると、あくる日には相府にも断らず、許都を去る。蜀には戻らず、道をかえて荊州けいしゅうへ向かう。

郢州えいしゅうの近くまで来ると、趙雲ちょううんが張松を出迎える。
荊州の境に入り、駅館へ着くと、関羽が出迎えの礼をなした。
あくる日、荊州の城市へ入ると、劉備、その左右に諸葛亮と龐統ほうとうが張松を出迎える。

曹操には不遜な態度であった張松も、劉備には謙虚である。
人と人との応接は鏡のようなものだといえるのかもしれない。

四日目、張松は別れを告げて蜀へ立った。
この三日間、張松はこの城中でもてなしを受け、不愉快と感じることは一度もなかった。
劉備らは十里亭まで見送り、ここでささやかな別宴をひらく。

張松は劉備に接するうちに、蜀に必要なのは劉備以外にいないと確信し、入蜀をすすめる。入蜀の道しるべとして、西蜀四十一州図を劉備に献上した。
そして張松は益州へ帰っていった。

張松が首都成都せいとに近づくと、孟達もうたつと法正ほうせいが迎えにでていた。
三人は松の下で茶を飲み、話にふける。
「曹操はまずい」と張松は言い、「他に誰を迎えたらよいか」とふたりに問うた。
三人の考えは劉備を主と仰ぐことで一致する。

あくる日、張松は劉璋りゅうしょうへ報告する。
「曹操は下心があり、蜀へ攻め入る気配があります」

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