臨戦第一課(りんせんだいいっか) 赤壁の巻

内容

ある日。曹操(そうそう)は、南方の形勢ついての軍議を開いた。
夏侯惇(かこうじゅん)は劉備(りゅうび)討伐を主張した。
曹操は同意し、夏侯惇を大将に、于禁(うきん)と李典(りてん)を副将に命じ、十万の軍団を編制した。
荀彧(じゅんいく)と徐庶(じょしょ)は劉備討伐に反対したが、夏侯惇は、失敗すれば自分の首を差し出す、といった。

一方、新野(しんや)では、劉備は諸葛亮(しょかつりょう)をかわいがりすぎると不平がでていた。
関羽(かんう)と張飛(ちょうひ)は劉備に不平不満をいい立てた。
劉備は、諸葛亮を得たことは、魚が水を得たようなものだ、といった。
以後、張飛は諸葛亮のすがたを見ると、水が来た、とばかにして笑った。

劉備は夏侯惇が十万の兵を率いて攻めて来たことを知り、関羽と張飛に相談した。
「たいへんな野火です。水を向けて消したらいかがでしょう」張飛は劉備を皮肉った。
劉備は諸葛亮に呼んで、相談した。
「ご心配は無用です。ただ、関羽と張飛は私の命に従わないでしょう。恐れながら、わが君の剣と印をお貸しください」諸葛亮は言った。

劉備は諸将を呼び、諸葛亮は諸将に配陣と策を命じた。
「軍師自身は、どちらで戦うのか」張飛が大声で尋ねた。
「ここにいて、新野を守る」諸葛亮は答えた。
「われわれには城を出て戦えと命じながら、おのれは安全な場所にいるとは」張飛は大声で笑った。
諸葛亮は一喝した。
「剣印ここにあるのが見えないのか。命にそむく者は斬る」
反抗しかけた張飛は、劉備になだめられ、いやいやながら出陣した。
張飛だけでなく関羽も、諸葛亮の策があたるか否か、今度だけは命令に従っておこう、といった程度であった。

建安(けんあん)十三年七月。夏侯惇率いる十万の大軍は新野北方の博望坡(はくぼうは)まで迫った。
後陣の守りに于禁と李典をおき、夏侯惇の部隊は先陣として突き進んだ。
夏侯惇の部隊と劉備軍趙雲(ちょううん)の部隊はぶつかった。
趙雲はぶつかっては逃げを繰り返し、夏侯惇を博望坡に誘いこんだ。
博望坡には劉備の部隊が待ち構えており、夏侯惇にぶつかったが、趙雲とともに逃げ走った。
夏侯惇は劉備と趙雲を追った。

後陣にいた于禁は、夏侯惇のもとに馬を飛ばしてやってきた。そして、敵を追って深入りしすぎである、と言った。
「引き返せ」夏侯惇は言った。
そのとき、四方から火の粉が降り注ぎ、趙雲が現れた。

後陣にいた李典は前方が燃えているので、救援に出ようとした。
そこに、関羽の部隊があらわれて道をふさぎ、張飛は兵糧・武器を焼き払って後方から攻めてきた。

夏侯惇の軍は大敗し、夏侯惇、于禁、李典はそれぞれ逃げ走った。

関羽と張飛は戦場を見廻り、諸葛亮の智謀を認めざるを得なかった。

数日後。諸葛亮は劉備に言った。
「この次は曹操みずから攻めて来ます。しかしこの城はもろくて頼りになりません」

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