山谷笑う(さんこくわらう) 望蜀の巻

内容

呉(ご)軍の火計により、魏(ぎ)軍八十余万は三分の一以下になる。

呉軍韓当(かんとう)は熊手で、肩に矢が刺さている黄蓋(こうがい)を波間から引き上げる。

呉軍大将のひとりは、蔡仲(さいちゅう)を斬り、その首を槍のさきに刺して駈け歩く。

炎に囲まれた林のなかを、曹操は馬に鞭打って逃げる。

うしろから魏軍二十数騎が曹操に追いつく。

林道の一方から呉軍呂蒙(りょもう)が現れる。

魏軍張遼(ちょうりょう)はしんがりをつとめ、曹操を先に行かせる。

一里逃げると、呉軍凌統(りょうとう)が現れる。

林の中へ駆けこむ曹操は徐晃(じょこう)と合流する。

徐晃は張遼を救いに向かい、呂蒙、凌統の兵を蹴ちらして、張遼を助け出す。

曹操らは東北へと落ちて行くと、北国の兵千余を率いた馬延(ばえん)と張顗(ちょうぎ)が合流。

十里ほど行くと、呉軍甘寧(かんねい)は曹操が行く道をふさぎ、馬延と張顗を斬る。

曹操は南夷陵(なんいりょう)の道を避け、西へ曲がって逃げる。

夜の五更の頃。烏林(うりん)の西、宜都(ぎと)の北のほうまで曹操は逃げる。

「あはははは」ここに伏兵を置かなかった周瑜(しゅうゆ)と諸葛亮(しょかつりょう)を曹操は笑う。

左右の森林から劉備(りゅうび)配下の趙雲(ちょううん)が現れ、前後の道を囲む。

曹操は慌てて逃げる。

大雨が降りだす。

夜が白みかけた頃。曹操らは貧しげな山村にたどり着き、食物を略奪する。

魏軍李典(りてん)、許褚(きょちょ)、そのほか兵百余が曹操に合流。

陽は高い。曹操の前にふたつの分かれ道がある。南夷陵(なんいりょう)の大道と北夷陵(ほくいりょう)の山路。

曹操は許都(きょと)までの距離が短い、南夷陵の大道を選ぶ。

午(ひる)過ぎた頃。曹操は葫蘆谷(ころこく)へかかると、山村で略奪した食物を食べることにする。

「ははは」ここに伏兵を置かなかった周瑜と諸葛亮を曹操は笑う。

四方八面から劉備配下の張飛(ちょうひ)が現れる。

曹操は耳をふさぎ、眼をつぶって逃げ走り、味方の将士もあとを追う。

曹操の前にふたつの分かれ道がある。

偵察兵は「山路の方は峠や谷間から人煙が昇っており、敵兵がいるに違いございません」と言う。

曹操は人煙が昇る山路を選ぶ。

曹操らは華容(かよう)山麓から峰越えの道を進む。 馬は疲れ、負傷者もいる。

雪が降りだす。

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