第八巻 図南の巻 第一九五回 酒中別人
あらすじ
葭萌関を出た劉備は荊州へ帰るため、高沛と楊懐が守る涪水関へ向かう。
関門より酒肴の品々を運んでくる軍隊がくる。遠路途中の慰労のためだという。
劉備軍はここに幕舎を張り、休息することにする。
高沛と楊懐は関門兵三百をつれ、陣中見舞いに訪れる。劉備は二人を迎い入れ、酒宴は賑わう。
その間に関平と劉封は外で待機している三百の関門兵を引き下がらせ、酒や肴を与えてもてなす。
戻ってきた関平と劉封は高沛と楊懐を捕らえ、ふところを探ると短剣が見つかる。楊懐と高沛の首は斬られた。
星が出た頃、龐統は一軍を集める。捕虜の関門兵三百はすでに寝返っており、彼らを先頭にして涪水関へ向かう。
「楊懐将軍、高沛将軍のお戻りであるぞ。開門開門」
昼間の出来事を知らない蜀兵は鉄扉を開く。涪水関は劉備軍に占領された。
その日の夜、祝宴で劉備は泥のように酔う。
劉備は言う。
「今回は酒を飲みつつ一城を奪ったようなもので、実に愉快だ」
龐統は皮肉る。
「人の国を奪って楽しみとするは、あなたらしくもありませんな」
劉備は顔色を変えた。
「この場から退け」
大睡の後、目を覚ました劉備は近侍の者から自身の酔態を聞き、龐統を呼んで無礼を詫びる。
龐統は言う。
「みな酒中のこと。酒中別人です。わたくしの皮肉も気になざらずに」
ふたりは手をたたいて笑った。