長坂橋(ちょうはんきょう) 赤壁の巻

内容

景山(けいざん)の上から戦いの情勢をながめていた曹操(そうそう)は、わが陣地を駆け破るひとりの男を見た。その男は趙雲(ちょううん)であるという。
「矢を放つな、趙雲(ちょううん)を生け捕って連れてこい」曹操は命じた。

趙雲は一矢も受けることなく、曹操軍の厚い囲いを、敵将を斬り捨てながら突破していった。

山間の小道までたどり着いた趙雲の前に、大斧を使う鍾縉(しょうしん)と方天戟(ほうてんげき)を使う鍾紳(しょうしん)の二兄弟が待ち構えていた。
趙雲は二兄弟を斬り捨てた。

長坂坡(ちょうはんは)まで来た趙雲は、橋の上に大矛を横たえている張飛(ちょうひ)の姿を見た。
曹操軍文聘(ぶんぺい)は趙雲に迫った。
趙雲は声を振りしぼって張飛を呼び、助けを求めた。
張飛は文聘を斬り、趙雲に橋を渡らせた。

趙雲は劉備(りゅうび)に、糜(び)夫人の最期を報告し、甲(よろい)を解いて眠っている阿斗(あと)を劉備に渡した。
劉備は阿斗を頬ずりしたが、すぐに草むらへ放り投げた。
「趙雲を一小児のために、危うく戦死させるところであった」劉備は言った。

曹仁(そうじん)、李典(りてん)、夏侯惇(かこうじゅん)、楽進(がくしん)、張遼(ちょうりょう)、許褚(きょちょ)ら、曹操軍すべてが長坂坡(ちょうはんは)へ迫った。
橋の上には張飛が馬を立てていた。
大将夏侯覇(かこうは)は張飛のそばへ迫りかけた。
張飛は蛇矛(じゃぼこ)を横にふるって雷光を宙にえがいた。
夏侯覇は馬上から転げ落ちた。
「兵を引け」曹操は号令した。

長坂橋(ちょうはんきょう)が焼き払われたことを知った曹操は、すぐに橋を架けて劉備を追いつめろ、と命じた。

劉備は江陵(こうりょう)へ向かっていたが、道を変更して、沔陽(べんよう)から漢津(かんしん)へ出るため、夜も昼も逃げつづけた。

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