宝剣(ほうけん) 赤壁の巻

内容

曹操(そうそう)軍曹仁(そうじん)の部下淳于導(じゅんうどう)は、劉備(りゅうび)らを追撃する途中、行く手に立ちふさがる糜竺(びじく)を捕らえて自身の鞍わきに縛りつけた。

淳于導は劉備配下の趙雲(ちょううん)を見つけ、向かって来た。
趙雲はするどい槍で淳于導の体を突き上げ、大地へ叩きつけた。敵の馬を奪って糜竺を馬に乗せ、甘(かん)夫人も別な馬に乗せて、長坂橋(ちょうはんきょう)へ急いだ。

長坂橋の上には張飛(ちょうひ)が大矛を横たえ、馬を立てていた。
趙雲のうしろに甘夫人がいることに気づいた張飛は、趙雲への誤解を解いた。
糜竺と甘夫人を張飛にあずけると、趙雲ひとりで、糜(び)夫人と阿斗(あと)を捜しに曹操(そうそう)軍の中へ入って行った。

夏侯惇(かこうじゅん)の弟夏侯恩(かこうおん)が趙雲に迫ってきた。
趙雲は夏侯恩を斬り、青釭(せいこう)の剣を取り上げ、ふたたび曹操軍の中へ駆けて行った。

幼児の鳴き声がした。
趙雲は糜夫人と阿斗を見つけた。
糜夫人は左の股を敵に突かれており、痛手を負っていた。
趙雲は馬に乗られるように促した。
糜夫人は頭を横に振り、阿斗を趙雲へあずけた。
敵兵の声が迫ってきた。
「大事な若君を預りながら、なぜ迷っているのか。私などは見捨てて」糜夫人は言った。
「どうして、あなた様おひとりを、ここに残して立ち去れましょう」趙雲は馬の口輪を取って引き寄せた。
糜夫人は身をひるがえして、古井戸へ身を投げた。
趙雲は声をあげて泣いた。草や板で古井戸をおおった。三歳である阿斗を甲(よろい)の下に抱いて、馬にまたがった。そして敵兵に囲まれた中を突破した。

途中、三尖両刃(さんせんりょうじん)の怪剣を使う晏明(あんめい)、つぎに、長い鎖の両端に二箇の鉄球をつけた武器を使う張郃(ちょうこう)が道をふさいだが、趙雲は斬り倒し、曹操軍のなかを駆け進んだ。

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