一竿翁(いっかんおう) 赤壁の巻

内容

百杖(ひゃくじょう)の刑を受けた黄蓋(こうがい)は、陣中の寝所に横たわったまま、うめいていた。
日ごろ親しい闞沢(かんたく)が見舞いに来ると、見舞いに来た他の人々を退けて、黄蓋は身を起した。
闞沢は「黄蓋将軍が百杖の刑を受けられたのは苦肉の計ではないのですか」と尋ねた。
「さすがは闞沢」と黄蓋は認め、すべてを打ち明けて、曹操へ使いする大役を頼んだ。
闞沢は黄蓋から曹操(そうそう)へ宛てた一書を受け取り、夜になると呉の陣中から姿を消した。

数日後の夜。曹操軍の水寨(すいさい)に近づく釣りをしていた漁翁を、曹操軍の見張りは捕らた。
その漁翁は「呉の闞沢である。曹操殿に直言申し上げたい」と言った。
ほどなくして、闞沢は曹操の前に引き出された。

闞沢は曹操に黄蓋の書面を渡し、曹操はその書面を何回も読み返していた。
やがて、こぶしで机を叩きながら、「謀略だ。この老爺を斬れ」と曹操は命じ、書面を破り捨てた。
闞沢は「曹操がこのような小人物とは思わなかった」と笑った。
曹操は、黄蓋の書面には味方に来る時の日時が書かれていないのが謀略の証だ、と言った。
闞沢は、わざと日時を明示せず、好機を計って参ろうとすることこそ、本心の証だ、と言った。
曹操は闞沢に詫びて、酒宴を設けた。

酒宴の途中、侍臣が曹操へ書状を渡した。

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