あらすじ
一
曹操は卓の下に隠して、渡された書状を読み終わり「貴殿に対して、予は一点の疑いも抱いておらん。呉へ帰って、承諾した旨を黄蓋へ伝えるがよい」と言った。
闞沢は首を横に振った。「その使いは、ほかの者をやってください。てまえはここに留まります」
曹操は再三、闞沢に頼んだ。お互いがお互いの腹を探っているのだ。
闞沢は初めて承知した。
呉の陣所へ戻った闞沢は、さっそく黄蓋のもとへ向かった。
黄蓋はとても喜んだが「最初は疑っていた曹操が、どうして深く信じたのであろう」と尋ねた。
闞沢は「てまえの弁舌だけでは信じ切らせることは難しかったでしょうが、蔡和と蔡仲の書状が曹操に届き、呉軍内の情報と、てまえの語ったことが一致していたため、疑う余地なしとなったためでしょう」と答えた。
「甘寧の部隊へ行って、蔡和と蔡仲の様子を見てくれんか」と、黄蓋は闞沢に頼んだため、闞沢は心得て向かった。
闞沢が甘寧を訪れると、偶然、蔡和と蔡仲が入ってきた。
甘寧が闞沢へ目くばせをしたため、ふたりは蔡和と蔡仲がいることに気付いていない様子でいた。
闞沢は「周都督は人を、ちりやごみのように扱うのはよくない」と言い、甘寧は相槌を打って、同意した。
しばらくして、蔡和と蔡仲がたたずんでいることに気付く態度をした甘寧と闞沢は、急に口をつぐみ、隣室へ移動した。
二
闞沢と甘寧は、たびたび密会しており、ある日の夕方も、ふたりは密談していた。
蔡和と蔡仲は、なかの様子を陣幕の外から耳を寄せて伺っていた。
その時、夕風が陣幕を払い、闞沢と甘寧は蔡和の半身を見た。
「ふたりに聞かれたからには、一刻も早く、ここから逃げなければ」と甘寧が言うと、蔡和と蔡仲は、闞沢と甘寧に曹操の密命を受け、偽って呉に降伏したことを打ち明けた。
蔡和と蔡仲が打ち明けた理由は、闞沢と甘寧の密談が、周瑜に対する反感、いかにして呉の陣を脱走するか、いかにして暴動を起こすかといった内容であったためである。
その後、四人は酒を酌み交わした。
蔡和と蔡仲は、その場で曹操へ報告する文を書き、闞沢も別に書簡を書き、曹操へ送った。