孟徳新書(もうとくしんしょ) 望蜀の巻

内容

蜀(しょく)の使者張松(ちょうしょう)を閣の書院へ連れて行った楊修(ようしゅう)は、茶をすすめ、遠来の労を慰めた。
楊修は曹操(そうそう)が書いた孟徳新書という名の一巻を張松に渡した。
張松はざっと目をとおすと、楊修の手へ戻し、孟徳新書の文を初めから終わりまで間違うことなくそらんじた。
楊修は張松の才に驚き、急いで曹操のもとへ行き、そのことを報告し、称賛した。
曹操は楊修に、明日の大兵調練に張松を連れてくるように、と命じた。

つぎの日。楊修は張松をつれて練兵場へ向かった。
曹操五万の軍隊は一糸乱れぬ動きを見せていた。
曹操は張松に問うた。
「蜀にはこのような軍隊があるか」
「ありません。蜀は文治と道義によって治まっており、戦争の必要はなかったのです。貴国の如くには」
横で二人の会話を聞いていた楊修は、張松が曹操の心をふたたび悪くさせはしないかと心配し、恐れた。

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