第七巻 望蜀の巻 第一八五回 敵中作敵
あらすじ
曹操の使いが韓遂へ書面を届ける。
「今は敵と味方に分かれているが、和睦も成立したことだし、旧友韓遂として訪ねてこないか」
韓遂は旧情を動かされ、甲も着ずに、ひとりで曹操を訪ねる。
曹操は陣外へ出て、内へ招かない。少しの立ち話をして、諸将と要談中という理由でふたりは別れる。
その様子を見ていた者が馬超へ知らせる。
あくる日、馬超は韓遂を呼び、曹操と密談していたことを問う。
韓遂は密談を否定する。
「少年時代のことを話して別れただけです」
馬超の韓遂への疑いは晴れない。
馬超は腹心の男を韓遂の陣門に立たせ、出入りを見張らせる。
一方、その日の夜、賈詡は曹操に次の策を献じていた。
しばらくすると、曹操の使いが韓遂へ書簡を届ける。
見張りの者から馬超は報告を聞き、すぐに韓遂のもとへ向かう。
韓遂は曹操からの書簡を馬超へ見せる。
その書簡は文字を塗りつぶしたり、書き入れがあったりと、なんの意味だかわからない。
馬超はその書簡を袂へ入れて、持ち帰る。
あくる日、馬超から召し出しがあり、韓遂は出向く。
馬超は問い詰める。
「曹操の書簡を灯に透かすと、不穏な文字が見える。まさか裏切るつもりか」
韓遂は自身の疑いを晴らすため、陣外で曹操と立ち話をするので、その間に曹操を討ち止めよと勧める。
あくる日、韓遂は曹操の城寨を訪ねる。
曹操は曹仁を呼び、代わりに対応させる。
曹仁は馬上のままで韓遂に告げ、立ち去る。
「昨夜はお手紙をありがとう。丞相もよろこんでおられる。事前に発覚しては一大事。馬超の眼にご注意を」
物陰で見ていた馬超は激怒。韓遂が帰るのを待ち構えていた馬超は、剣を取って荒れ狂った。
韓遂は肩を落として自分の営へ戻ると、八旗の中の五人の侍大将が慰める。
「われわれは将軍の二心なき忠誠を知っています。馬超は曹操には敵わないでしょう。今のうちに曹操に降伏してはいかがですか」
五旗の侍大将は、すでに馬超を見限っている。
ついに韓遂は決心する。
その日の夜、楊秋を密使に立て、曹操へ送る。
曹操は返書とともに、一計を授けてきた。
あくる日、韓遂は五旗の腹心を集め、曹操の策を協議。実行することになる。
火攻めのために油幕を張り、枯柴を隠し、宴席の準備をする。あとは馬超を宴に呼ぶだけだ。
韓遂らは前祝いに一献酌み交わす。
突然、馬超が入ってきて、韓遂に斬りかかる。
「昨夜から、何を密議していたか」
戟をとる間もなかった韓遂は左の肘で身を防いだため、馬超の剣は左腕をつけ根から斬り落とす。
五旗の侍大将は左右から馬超に討ってかかる。
馬超に付き従ってきた龐徳と馬岱は韓遂の部下を手当たり次第に斬っている。
油幕の外は火に包まれている。
[この火は韓遂に斬りかかる前に、馬超自身が放った火が原因である]
事前に示し合わせた策のとおり、火が上がるのを合図とみた曹操軍は、渭水を渡り、火の中へ駈け込んできた。
「馬超を生捕れ」
馬超は陣外へ駆けだすが、龐徳や馬岱の姿が見あたらない。
西涼軍は大混乱となる。