あらすじ
一
龐統は、曹操が「三公に封じる」と言って、龐統の心の内を探っていると感じ、警戒した。そのため、顔を横に振り、「それがしの利益ではなく、民の苦労を救うためです」と、丁寧に断った。
龐統は曹操と別れ、江岸へ出て、小舟に乗ろうとした。
その時、「曲者(くせもの)、待て」と、龐統はうしろから押さえ込まれた。
「曹丞相の客として、いま帰ろうとするこの方に対して、曲者とは何事だ」と、龐統は叱りつけた。
「白々しい。丞相を欺くことは、できたかもしれんが、拙者は騙されんぞ。丞相に連環の計をささやいて、わが北軍の兵船を焼き払う策に違いない。もう一度中軍へ戻れ」
二
龐統は観念したのか、目を閉じた。
「いったい何者だ、お主は」
「この声を忘れたか」
「何」
「徐庶だよ、俺は」
「あの徐君か」と、龐統は徐庶の姿を見ながら、「君ならば、この龐統の気持ちがわかるはずだ。呉民のために見逃してくれ」と哀願した。
徐庶は「ご心配は無用。劉皇叔とお別れの際に、他人のためには計を謀らずとお約束しておりますので、誰にもこのことは語らずにおります」と言い、続けて、「ですから、何も知らぬ顔をしているが、やがて連環の計、火攻めの計にかかれば、徐庶は魏の陣中にあって焼かれてしまう。これを逃れる方法はないでしょうか」と相談した。
「それは簡単なことだ」と、龐統は徐庶の耳に口をよせ、何事かをささやき、船へ飛び乗って、徐庶と別れた。
ほどなくして、曹操の陣中に噂がながれた。西涼の馬超が、韓遂と共に軍を率い、許都へ向かっているというのだ。